• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



 ここはどこかって? 
 私一人なら絶対入ることがない、いや入れてもらえない大人の高級バーだ。
 薄暗い店内、静かに流れる洋楽、グラスを拭く蝶ネクタイのバーテンダー。
 所狭しと並ぶ棚の洋酒。窓からは街の夜景。
 場所は知らん。六つ子につれてこられた。

 もちろん私はお酒を飲めないので、私の前に出されているのはソフトドリンク。
 だがおそ松さんたち五人の方は、相当に酒が入っている。
 私へのタッチを自粛しなくなる程度に。
 
「ほら松奈も飲みなよ~。これ、すごく美味しいよ!」
 と、できあがってる十四松さん。
「いけない子猫ちゃんだ。その目は俺を誘ってるつもりか? さあ、飲むといい」
 とサングラスを外すカラ松さん。
「僕のも飲んでいいよ~。お金? 全部僕たちが払うから心配しないで」
 トド松さんも笑顔だ。笑顔で強要してくる。セクハラかつアルハラ。もはや救いがない。

 何、この狂った空間。
 おかしくない? おかしいでしょ。
 何でこうなった。どうしてこうなっている!
 さっきの私が見た白昼夢こそが現実のはず。

 私は、五人の男性に嬉々として接待される顔レベルではない。
 なのになぜ、着々とオプション料金がたまり続けているのか!
 誰か助けてっ!!

「おい、おまえら!!」

 チョロ松さんが! ついに立ち上がった!!

 私は安堵する。六つ子の良心といわれるチョロ松さんが、立ってくれた。
 この狂った空間を正常に導くため、彼は兄弟達にビシッと……。
 
「女の子にいきなり強い酒を勧める奴があるか! 最初は度数の低いやつからだろう!」

 え。いや、私、未成年……。

 だが『おお~』と他の兄弟たちは納得する。
「そっかそっか。ごめんな、松奈。何を頼もうか~」
「子猫ちゃんにはスクリュー・ドライバーかな? それともカルーア・ミルク? カシスオレンジも定番かな」
「フローズン・スタイルとかフラッペ・スタイルの方がスイーツっぽくて松奈ちゃんも
喜ぶんじゃない? ほら、これなんか美味しそうだよ!」
「はいはいはーい! 店員さーん。女の子向けでオススメなの、教えてくださーい!」
「おい十四松、勝手に頼むんじゃねえよ! ほら松奈、どれがいい? 早く決めてよ」
 
 どうしよう。彼らが何を言っているのかサッパリ分からない。

/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp