第8章 派生④カラ松END
「一緒に気持ち良くなろう? 子猫ちゃん」
「もう好きにして下さい……」
あきらめて言うと、カラ松さんは嬉しそうに笑った。
で、有言実行された。
カラ松さんは満足そうだったけど、私は翌日の夕方まで寝る羽目になり、さらに起きた直後にまたヤラれて、すぐお布団に帰還したのであった……。
…………
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それから私は、カラ松さんを待って日々を送るようになった。
ニートな人なので、日課のように通ってくれた。
私が二人分のお夕飯を作るときもあれば、泊まっていくときもある。
松野家のことはあまり話に出さないけど、一松さんは元気みたいだ。
最近は猫カフェ常連の女の子と友達になったらしい。
今度、一緒に喫茶店に行くそうだ。
このまま新しい恋に目覚め、立ち直ってくれることを願うばかりだ。
カラ松さんとは、毎日を楽しく過ごした。
映画館に行ったり、散歩したり、ゲーセンで遊んだり。
手をつないで一緒に帰れることが、何よりも嬉しかった。
ただし、私の帰還については――。
カラ松さんは青空のような笑顔で言い放った。
「心配しないでくれ! 転送装置はとっくに破壊され、修復は不可能になっている。
もう三百万を用意しても無駄だ。帰れなくて残念だったな、松奈!」
次の瞬間、カラ松さんは私のパンチを受け、地面にヒビを作ったのであった。
…………
かくして、私の帰還ルートもあっさり閉ざされ、私は永久にここに留まる羽目になったのである。
その他の細かいもろもろも、サイコパス松さんが手際よく片付け、どうにかなっている。
この人の裏表の落差が、たまに怖くなる私であった。
そしてバイトをしながら、カラ松さんを待ってのんびり過ごす日がしばらく続いて。
ある日。
「松奈。俺、今日からここに住むから」
カラ松さんが私物を持って、アパートに越してきた。
松野家で何かあったのだろうか。いつも以上に深刻な顔をしていた。
でも私には深く語らない。
そのまま、次の日にはスーツを買い、ハローワークに行ったり、履歴書を書いて面接に行く日々が始まった。
どんな心境の変化があったのかは謎だけど、私はカラ松さんがいてくれるのが嬉しかった。