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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「あのさ。何深刻になってんの? 俺たち別に結婚してるわけじゃないし。
 他の奴を好きになったとか、くっついたとか別れたとか、よくある話でしょ?」

 だから、よくある話なのに人を監禁するかと。

「ごめんなさい。一松さん……」
 こぼれた涙を指ですくわれる。
「だからさ、何マジになってんの? 何か怖いし」
 いえ、ですからそういうことを言う人が以下略。

 なおも謝罪の言葉を紡ごうとすると、唇をふさがれた。
 目を閉じると、舌がそっと入り込み優しく口内を味わい、それから離れる。
 抱きしめられる。強く、深く。

「松奈のことは、全然好きじゃ無くなったから。他の男と寝る女とか、超嫌いだし」

「一松さんあなたに会えて、本当に良かったです」

 そして玄関を叩く音がした。
 一松さんは静かに扉に向かう。

 もう、一松さんと以前のように、笑って話すことはないんだと知る。
 それが何より悲しかった。

 
 …………

 カラ松さんは扉を閉め、車に戻ってきた。
 私の私物が入ってるらしいカバンを持っていて、それをトランクに入れる。
 そして運転席に戻り、シートベルトをし、助手席で待っていた私にキスをした。
「一松さんは?」
「隠れ家を片付けてから戻ると言っていた。大丈夫。ちゃんと家に戻るよ」
「そう、ですか」

 エンジンがかかり、車が動き出す。
 振り向けば、あまりに小さい家が見えた。

 うつむき、肩をふるわせていると、そっと手を握られた。

「どう理由をつけても、あいつのしたことだって許されないことだ。松奈は十分に償いをしたよ」
「…………」

「大丈夫。あいつだってフラれた経験は山ほどある。他の皆も支える」

「でも、これからどうすれば……」

 数週間の生活で色々疲れているし、家に戻って何ごともなかったように振る舞うなんて出来ない。

「一旦、病院に行こう。その後のことは俺が考えているから任せてくれ」
「は、はい」
 車は街の中を走る。カラ松さんの横顔は、いつも以上に大人っぽい。
 私はカラ松さんにもたれるように、そのまま眠ってしまった。

 …………

 病院では幸い、健康状態に大きな異常はなかった。
 入院の必要もないとのこと。 
 病院を出た私はまたカラ松さんに車に乗せられた。

 そして松野家に――は帰らなかった。

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