第8章 派生④カラ松END
帰ってきた言葉は意外なものだった。
「ちゃんと言ってくれて、スッキリした。俺も松奈の気持ちは大事にしたいし」
「一松さん……」
心の重荷が取れ、泣きそうになる。
「だから」
「え?」
「ごめんね」
お腹に違和感。そしてバチッと言う音がした気がする。
何をされたのかすら分からず、私の意識は闇に沈んだ。
…………
…………
そして、私は一松さんに監禁された。
このあたりの流れは本編3章(165あたり~200p)と展開共通なので実際に読むか、脳内補完でよろです。
……!?
わ、私何か言いました!?
とにかく一松さんによって閉じ込められ、追い詰められた私は、どうにかしてスマホを手に入れた。
そして……松野家と連絡を取ることに成功した。
…………
…………
『松奈、無事か!?』
スマホから聞こえた声はカラ松さんだった。
「……っ!!」
瞬間に涙があふれる。
「カラ松……さん……っ!」
隠れ家に一松さんに閉じ込められた。あれから数週間は経ったはずだ。
一松さんが病んでしまった経緯は理解出来るし、申し訳なく思う。
だからここに留まっていた。もう一度、一松さんを好きになろうと努力もした。
でもスマホの向こうのカラ松さんの声を聞いたら、もう全てが限界だった。
涙をポロポロこぼし、
「カラ松さん、私は大丈夫です。一松さんには、ひどいことはされていないので」
誰にどう言われても、カラ松さんが好きだ。この人と、ずっと一緒にいたい……!
『分かった。今、そっちに向かっている。もう少し待ってくれ』
「はい……はい!」
そしてスマホが切れ、一気に心細くなる。
高鳴る思いと不安と、少々の罪悪感。
けれどカラ松さんを想うと、不思議に心が落ち着いた。
「松奈」
だから、一松さんが陰鬱な顔で入ってきたときも、平静な思いで振り向けた。
今の会話、聞こえただろうか。
下手すると刺されるかもと思ったけど、一松さんは何も持っていなかった。
ただ、果てしなく悲しそうな顔をして。
「行くんだ」
「……ごめんなさい」
「いいよ。何か冷めてきたし」
一松さんの声は驚くくらい、静かで、澄んでいた。
冷めてきた人が、人を監禁したりしないでしょうに。