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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「一松と別れて俺を選んでくれるのなら、もう浮気でも何でも無い。
 俺たちも一松に精一杯の配慮をする。分かってくれると祈ろう。
 それに元はといえば、俺が卑怯な手を使ったんだ。本当にすまない」

 抱きしめられ涙ぐんだ。このままいつまでも抱き合っていたい。
 
「でも、今日は別々に帰りましょう?」

 臆病な私は、そんなことを言ってしまう。
 カラ松さんも何か言いたそうだったけど、うなずいた。

「分かった。じゃあ俺はもう少しこのあたりを散歩してから帰るよ」
 私に触れるだけのキスを落とす。肩を抱き、
「早く、一緒に帰れるようになりたいな」
 と微笑んだ。

 その笑顔は、痛さもダサさもない大人の男性だった。

「え……はい……」
 真っ赤になって目をそらすのが精一杯。
「それじゃあ、また後で」
「ああ、また一緒にホテルに行こう」
 え。もう次回の予約取り付けなの?
 焦りつつ、カラ松さんに手を振る。
「遅いから周囲に気をつけて。明るい道を歩くんだぞ!」
 小学生じゃないんだから。大丈夫ですって。
 手を振って土手を出て、舗道に戻った。

 少し歩くと、やや寂しい雰囲気の公園に入る。
 この時間だと全然ひと気がない。そういえば、カラ松さんと一緒に遅くなった言い訳をどうしよう……。
 悶々としつつ、早足で公園を抜けようとする。

「松奈」

「っ!!」

 暗闇から突然呼ばれ、心臓が止まるかと思った。

「い、一松さん……!」

 色んな意味でドキドキする。
 ポケットに手を突っ込み、暗闇の中からダルそうに一松さんが出てきた。
 よどんだ空気を感じるのは気のせいではないだろう。

「……遅いから迎えに来た」
「そ、それはありがとうございます」

 心臓が早鐘を打つ。一松さんの雰囲気がいつもと違う気がした。
 いや、それはそうだろう。
 次兄と彼女がそろって消えて、別々とは言え夜に帰ってきたら……。

「松奈」

 一松さんの顔は見えない。でも傷ついているのは痛いくらいに分かったから。
 大切な人のそんな様子を見るのは、もう限界だった。

「……あの、一松さん。本当に、本当に本当に本当にごめんなさい!
 どれだけ軽蔑されても怒られても、殴られても仕方ないと思ってます。
 でも、私……私……カラ松さんのことが……!」

「いいよ、分かってた」


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