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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END


 …………

 
 ホテルを出たとき、すっかり月夜だった。
 私たちは静かな川べりを歩いていた。

「松奈。大丈夫か?」
 カラ松さんの腕にすがり、どうにか身体を支える。
「……何とか……」
 結局、延長してしまった。

「すまなかった。松奈があまりにも可愛くて、つい……」
 つい、で、あそこまでヤリ続けるか。うら若き乙女が腰痛になるかと思ったわ。
 体力馬鹿とのお噂だが、回数重ねるごとに、どんどんヤバくなってませんか、サイコパス松さん。
 とにかく、もうヘトヘトである。

「やはり宿泊にした方が……」
「二人して朝帰りしたら、もうバレバレすぎでしょう」

 しかしこの時間に二人同時で帰るのも、変だ。
 そもそも一松さんを縛って出てきたっていうし、ごまかすのが大変そう。
 今回の言い訳はどうしよう……と考えていたら、カラ松さんが立ち止まる。
 見上げると、真剣な顔が私を見下ろしていた。

「松奈。俺たち、正式につきあわないか?」

「…………」

 チクリと罪悪感。本当なら笑顔で受けるはずの場面なのに。

「……でも」
「分かっている。さっきも言ったとおり、松奈も俺も一松を傷つけたくない。
 だが、あいつも男だ。薄々気づいているだろう。
 今のまま、コソコソと関係を続ける方が、ブラザーを傷つけるんじゃないか?」

「それは……そう、かも……」

 詭弁なのかもしれない。けど私たちが傷つけたくないと、いくらきれいごとを言っても、一松さん自身は深く傷ついている。

 そして私も、いつまでも二股かけるような女ではいたくない。

「カラ松さんを選んだら、もうあの家にはいれないですよ」

 ひどいフリ方をした元カレと、毎日顔を合わせる度胸は無い。

「それは……何とか考えよう。あいつの前では会話をしないとか、家の中では一緒に行動しないとか、やりようはあるはずだ。俺も色々考えている」
 
 カラ松さんが私の両手を取る。 
 月がきれいだ。川面がきらきらと対岸の光を反射している。

「松奈。君を愛している」

「……カラ松さん。私も……私も、です」

 最低。浮気女。二股。ビッ○。良心の罵倒が私に降り注ぐ。

 けど顔が近づき、キスをした。

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