第8章 派生④カラ松END
…………
ホテルを出たとき、すっかり月夜だった。
私たちは静かな川べりを歩いていた。
「松奈。大丈夫か?」
カラ松さんの腕にすがり、どうにか身体を支える。
「……何とか……」
結局、延長してしまった。
「すまなかった。松奈があまりにも可愛くて、つい……」
つい、で、あそこまでヤリ続けるか。うら若き乙女が腰痛になるかと思ったわ。
体力馬鹿とのお噂だが、回数重ねるごとに、どんどんヤバくなってませんか、サイコパス松さん。
とにかく、もうヘトヘトである。
「やはり宿泊にした方が……」
「二人して朝帰りしたら、もうバレバレすぎでしょう」
しかしこの時間に二人同時で帰るのも、変だ。
そもそも一松さんを縛って出てきたっていうし、ごまかすのが大変そう。
今回の言い訳はどうしよう……と考えていたら、カラ松さんが立ち止まる。
見上げると、真剣な顔が私を見下ろしていた。
「松奈。俺たち、正式につきあわないか?」
「…………」
チクリと罪悪感。本当なら笑顔で受けるはずの場面なのに。
「……でも」
「分かっている。さっきも言ったとおり、松奈も俺も一松を傷つけたくない。
だが、あいつも男だ。薄々気づいているだろう。
今のまま、コソコソと関係を続ける方が、ブラザーを傷つけるんじゃないか?」
「それは……そう、かも……」
詭弁なのかもしれない。けど私たちが傷つけたくないと、いくらきれいごとを言っても、一松さん自身は深く傷ついている。
そして私も、いつまでも二股かけるような女ではいたくない。
「カラ松さんを選んだら、もうあの家にはいれないですよ」
ひどいフリ方をした元カレと、毎日顔を合わせる度胸は無い。
「それは……何とか考えよう。あいつの前では会話をしないとか、家の中では一緒に行動しないとか、やりようはあるはずだ。俺も色々考えている」
カラ松さんが私の両手を取る。
月がきれいだ。川面がきらきらと対岸の光を反射している。
「松奈。君を愛している」
「……カラ松さん。私も……私も、です」
最低。浮気女。二股。ビッ○。良心の罵倒が私に降り注ぐ。
けど顔が近づき、キスをした。