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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月




 ……しかし、またあの家で履歴書を書くことを思うと気が重い。
 一松さんにどれだけ壮絶な復讐を食らうだろうか。
 も、もう少し話を聞いてからにしようかなあ。

「安心するざんす! 我々の働き次第で、これからどんどん大きくなるざんすよ!!」

 今日も出っ歯をきらめかせ、得意顔のイヤミ社長。

「で、私はどんなお仕事をするざんすか?」
 つい口調が移った。
「任せるざんす! これざんすよ!!」

 私はイヤミ社長に渡されたチラシを読んだ。

『可愛い未成年の女の子とお散歩☆
 業界最安値! 1時間5000円から!!
 各種オプション有り!裏オプションもあるかも?』


「だあああああああああっ!!」


 チラシをビリビリに引きちぎる音と、私の絶叫が、河川敷に響いたのであった。

 …………

 河川敷で怪しいオッサンと、可憐な乙女が口論していた。

「無理無理無理無理無理っ!! 絶対に無理!!ってか嫌です!!」
「大丈夫!! 危険はないざんすよ!! 紳士的な客だけを回すざんす!!」

「『裏オプション』とか書かれたチラシに釣られる客の、どこが紳士的なんですか!!」

「レンタル何とかとかあるざんしょ! それと同じ感覚ざんす!!」

「裏サービスを真っ正面からチラつかせてるあたり、典型的な未成年搾取ビジネスでしょうがっ!!」

 はあ、はあ、はあ、と肩を上下させる。
 冗談じゃ無い。せっかく松野家の人たちの温情で、『妹』として無事に暮らせて
いるというのに。何で自分から危ないバイトに足を突っ込まにゃならんのだ。

「他の女の子を勧誘するんですね。それじゃ!」
 一気に立ち去ろうとすると、

「いや~残念ざんすね~。一時間お散歩するだけで、ラク~に一万円なのに」

 足がピタリと止まる。

「い、いや。どうせあなたに搾取されて、丸々私に来ることは無……」
 するとイヤミ社長が全力で私にすり寄ってきた!! 近づくな、出っ歯が移る!!
「そーのーたーめーの!オプションざんす!! オプションといっても手をつないだり肩を寄せたりといった安全なことだけ! オプションで稼いだお金は、丸々チミのものざんす!!」

「……チラシに裏オプションとか堂々と書いてますけど?」

 広告チラシ(二枚目)を冷たく眺める。
 言うまでもなく『裏』とはヤバい意味の裏である。

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