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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月




 その夜。松野家の六つ子の部屋で、私たちは食事を取っていた。

「へー、やっと決まったんだ、おめでとう、松奈ちゃん!」
 アルバイトが決まったことを報告すると、トド松さんが喜んでくれた。
「ずっと頑張ってたもんね。俺も頑張らなきゃ」
 チョロ松さん。あなたはまず面接の電話をかけるべきでは。

「良かったじゃない。で、どこで働くの?」
 おそ松さんもニコニコしてくれる。本当にいい人たちだなあ。
「ええ。新しいビジネスを立ち上げた方に声をかけられまして。
 数ヶ月の契約で働いてほしいと。お給料もすごく良いんですよ!」
 詳しいことは明日、ということで仕事内容は私もまだ知らない。
 でも日給一万は確実だと言われた。
 金に目がくらみ、つい即決してしまったんだけど……。
 
「怪しくねえ? どこだよ、その店」

 タクアンをかじりながら、ボソッとつぶやく一松さん。

 うう。実は今更ながらちょっと怪しいと私も思ってたり。
 け、けど大丈夫!……だと……思う。
 いや、そもそも一松さんに履歴書作成を妨害されたせいで、自分の足で仕事を探す羽目になったのだ。今さら難癖つけられたって、知ったこっちゃない。
 
「お給料が入ったら何かおごりますね、一松お兄さん!」
 爽やかな笑顔で言うと、殺意のこもった視線で睨まれた。

「残念だな。臆病な妹のために、兄が面接についていってやろうと思ったのに」
 ……ええとカラ松さんはノーコメントで。
 彼はいい人だと知っている。それだけで十分だ。

「じゃ、明日早いので、私はお先に失礼します」
 と、お膳を持って立ち上がると、十四松さんが大声で一松さんに、

「あ、そうだ。一松兄さん! 何で今日、松奈を押し入れの中で性的に襲ってたの!?」

 沈黙。

 ……。

 …………。


 その後についてはご想像にお任せしよう。


 もンのすごい騒ぎになったが、最終的に私が土下座して許してもらえました。
 

 …………

 翌日。

「で、ここが会社なんすか? マジで?」
 河川敷の掘っ立て小屋の前で、私は絶望的な表情をする。
 やべえ。ドヤ顔で勤め先が決まった宣言したのに。
 これホームレスの家と五十歩百歩だ。これが会社? 私の勤め先?
 ありえない。帰ろう。

「ではお仕事の話ざんす! がっぽがっぽ、もうかるざんすよ!」
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