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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END


 …………。

 一回行けば、あきらめてくれるんだろうか……。

 なぜ。どうしてこんなことになったんだっけ。

 恋人用ホテルの無人受付で、私は呆然としていた。

「こ、子猫ちゃん。ど、ど、どの部屋にしようか」
 カラ松さんの声はもろに緊張している。内装だのスペックだのを比較し、ああでもない、こうでもない。

「早くしましょうよ。『ご休憩』で取るんだし」
「あ、ああそうだな。だが子猫ちゃんと最高の時間を過ごすために――」
「×××号室にしますね。はい、ご休憩っと」
「えー!!」

 ショックを受けたご様子のカラ松さん。
 女にリードされるのが嫌なら、ちゃんとご自分で選んで下さいな。

「行きますよ。もう」
 カラ松さんの手を引っ張り、さっさとエレベーターに乗り込む。
 しかし私の心臓はバクバクしている。

 部屋を取ってしまった。もう引き返せない。言い訳しようがない。

 これは浮気。人として最低な行為だ。
 逆の立場なら、私は一松さんを決して許さない。

 でも、カラ松さんの誘いを断れなかった。
『一度許してあげれば満足するかも』なんて、詭弁(きべん)だ。

 私は、カラ松さんと……その、ホテル、いき、たかった……。

 最低だ。自己嫌悪も自己憐憫も許されないくらい最低女。
 私、どの面下げて、一松さんを裏切るの? あんなにいい人を……。

 泣きそうな思いでうつむいていると、手をギュッと握られた。

 見上げるとカラ松さんが私を見下ろしていた。

「松奈。俺も一緒に背負う。だから自分一人だけの罪と悩まないでくれ」

 いつもの痛い発言だと、ごまかそうとしても、泣きそうになった。
 
 エレベーターの扉が開き、無人のホールが見えた。
「今はひとときのロンドを楽しみ、後のことはそれから考えよう。
 俺たちのこれからのことも、俺たちの大切な一松のことも」
 私にとっては優しいお兄さん、カラ松さんにとって大事な弟。
 それだけは決して変わらない。絶対に。
「行こう、マイハニー」
 手をつないで部屋に入る。

 そして、部屋の扉が閉まり、オートロックがかかった瞬間に、カラ松さんは私を抱きしめた。

「松奈……っ!!」

 え? カラ松さん、何か泣いてるしっ!!

「夢じゃないんだ! 薬になんか頼らないで……今、君が俺の腕の中にいる……!」

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