第8章 派生④カラ松END
えーと、私とカラ松さんの間で、深刻な主観の相違が生じてないか?
私はそんなに見たつもりはないし、誰かが近づけば気がつくものだし、親しい人から話しかけられれば、ちょっと笑顔になる。
にらむのだって、カラ松さんが言うよりもう少し頻繁に……。
「松奈……」
カラ松さんの腕の力が強くなる。
抱きしめられ、何が正解だったのか、だんだんとどうでも良くなってくる。
「俺のことが嫌なら、本気になってもがいてくれ。
好きな子に無理強いしたりはしないから」
顔が……熱い……。動かなきゃと思うのに動けない。
「松奈。キスをさせてほしい」
「それは一回だけ、ですか?」
「許してくれるのなら、これから何度でも」
カラ松さんの手が、私をゆっくりと、でも抵抗できない強さで彼の方に向けさせる。
その手が私の手とつながれる。
「好きだ」
そう言って、カラ松さんは私にキスをした。
そして糸を引いて互いの顔が離れる。
そのまま時がすぎ、私たちはじっと見つめ合う。
見つめ合い、カラ松さんがまた顔を近づけ――。
「え?」
私は両手でカラ松さんの顔を押す。
「ど、どうしたんだ? マイキティ。キスのおねだりじゃ」
「ンなワケないでしょう! 約束通り、キスをしたんだから離して下さいっ!!」
「え? そ、それは嫌だ。俺はもっと君と――」
「いえ私、忙しいですし! 暇なあなたと違って、色々とやることあるし!」
「ああ? ここの片付けか? なら喜んで手伝――」
「手伝っていただくのは一松さんだけ! あなたにやっていただく筋合いはありません!」
「ある! 君は俺の可愛い妹だ!」
「さっき兄妹の関係に戻るって提案を、ご自分で蹴ったでしょう!」
「松奈~。そんな意地悪ばかり言って、俺を困らせないでくれ」
カラ松さんは、私に抱きつき、頬を寄せる。
いやだから、どうすればこの状況を変えられるんだ。
「カラ松さん、本音を言って下さい。聞き流してさしあげます」
「あ、ハイ。一緒にホテルに行きたいです」
「行けるか、馬鹿っ!!」
「じゃあ離さない」
「駄々っ子かっ!!」
もうどうすればいいの、コレ。
誰だ、この人の恋の歯車を動かしたアホは。
私だー!
頭を抱えたいけど、カラ松さんに抱きしめられ、やはり動けないのであった。