第8章 派生④カラ松END
「……じゃあ離さない」
「え? えええ!? 他にないんですか? 何かしてほしいこととか」
「キスより激しい内容になってもいいのなら」
「よくありません!!」
「じゃあ、キスをしてくれないとダメだ」
カラ松さんの声が笑う。
……ん? 何か流れがおかしくない?
「どうするんだ、子猫ちゃん。俺とキスをするか、このまま抱きしめられているか」
気がつくと、カラ松さんの声から焦りが消えていた。
「…………は?」
あ、あれ? 何で私がカラ松さんに『何でもする』みたいな話になってるの?
でもよく考えると、今の状況って、カラ松さんだけに有利じゃね?
カラ松さんは私より強いし、体力がある。そしてここは人の来ない場所。
元々、私の余裕は『一松さんが助けに来るかも☆』『カラ松さんは優しいから、私が強気に出れば引いてくれるよね☆』という甘えに基づくものだ。
その二つが崩されたら……ヤバいのでは?
そもそもカラ松さんの脚力なら、もっと早く私を止められたはずでは?
それにカラ松さんがボケ体質であるにしろ、一松さんを縛るのはやっぱり変だ。
汗が一筋、頬を流れる。
まさかね。まさかあの優しいカラ松さんが……私がひとけのない場所に着くまでわざとゆっくり走っ……。
「だ、誰か、変質者がー……っ! ふがっ……」
叫ぼうとしたが口を手でふさがれる。
「一松は大切なブラザーだ。君と一松が心底から愛し合っているのなら、俺だって割って入るほどヤボじゃない」
「……っ!……ん……」
耳を舌が這い身体が跳ねる。
「俺だって男だ。あれだけ君に見つめられて、動かないでいることなんて出来ない!」
は? 何を言ってるんです。私を見てたのは、カラ松さんの方からで……。
「君だよ。いつも俺を見ていた」
低い声でささやかれ身体が震える。
耳を執拗に舌でねぶられ、うなじに口づけられ、手が腰の辺りを意味ありげにさすった。
「見てたのはカラ松さんでしょうが!!」
「違う。ふと視線を感じて顔を上げると君が見ている。
俺が近づけば気づいてすぐ振り返る。
話しかけると嬉しそうに笑う。
笑顔が見たくて話しかけすぎて……度が過ぎるかと思ったくらいでやっと可愛くにらんでくる。
でも嫌そうな顔は決してしない」