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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



 仕方なく、ツッコミをあきらめ冷静な声を出した。

「お気持ちは嬉しいです。ありがとうございます。でも私は一松さんの恋人ですし、一ヶ月後には松野家を出て行きます。そのことは――」

 抱きしめられながら、どうにか言葉をつむぐ。

「ああ、分かってる。分かってるんだ。でも、自分でもどうすればいいか……」

 だからどうする気なんですか。さっきと同じ事を繰り返してない?

「てか一松さんはどうしたんです? さすがにそろそろ起きたでしょ?」
「ん? ブラザーのことは心配ない。マイキティに何かあってはと、目が覚める前にふん縛って押し入れに入れておいたから」
「な……っ」

 何かあってって、たった今この瞬間に『何かあって』るんですが!
 さっきとは別の意味で逃げたくなってきた。
 だがカラ松さんは未だに離してくれない。


 とにかく冷静に、冷静に行こう。
「私がカラ松さんとおつきあい出来ないことは分かりますよね」
「ああ」
「かりそめとはいえ、兄と妹の関係でいたいことも」
「松奈は俺の可愛い妹だと思っているよ」
「じゃあ離して下さい」
「嫌だ!」
「さっきから何なんです! 怖がらせたくないとか迷惑をかけたくないとか言って!
 仰ることと行動が矛盾しまくってるじゃないですかっ!!」

 何なの、この人。どういう力の入れ方なんだ。
 力を入れてる感じじゃないのに、全力でもがいても、身体を離せない。

「そ、そうなんだ……俺もひどいことをしたいと思っているわけじゃ……」
「だから、それ止めて下さいよ! 堂々巡りしまくってるでしょう!」
「ああ。俺も君を怒らせたいわけじゃなくて――」
 あかん。頭カラッポ松さんと話を続けても、無限ループに陥るだけだ。

 強気に出てもダメ、理屈でもダメなら……引いてみる?

「なら、何をすれば離して下さるんです?」
「え!?」
 一気に声を弾ませない。

「……君と、元の通りの兄妹に、なり、たい」
「了解です。なりましょう。じゃあ離して下さい、カラ松お兄さん」
 さっきと似たような感じで、即、了承したが。

「…………」
 ちょっと!『何か違うなあ』みたいなため息をつくな!
「さっきのは無しだ。やっぱり『お兄さん』では無い方がいい」
「ならどうされたいんです?」
 また沈黙があり、

「キスがしたい。もう一度だけ」
「お断りします」
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