第8章 派生④カラ松END
あきらめて立ち止まる。カラ松さんも立ち止まった。
気がつくと研究所まで来ていた。
場所はその中庭。周囲はうっそうとした木々だ。
隙を見て、研究所に入れまいか。
壁を背にカラ松さんを見上げた。
じーっと見上げると、カラ松さんは顔を赤くし、あからさまに挙動不審になる。
「そ、そ、その、偶然だな。子猫ちゃん。お、俺も同じ方角に用事が――」
目をキョロキョロさせ、なぜか前髪を撫でたり、ポーズを決めようとしたり。
そろそろ殴っていいだろうか。
「あー、では私はこのへんで……」
今のうちだ。研究所の裏口まであと少し!
私はカラ松さんの横をすり抜け、走ろうとした。
「ま、待ってくれ、松奈っ!!」
ドンッと音がした。
カラ松さんが壁に両手をつき、私を見下ろしていた。
「あ、あの、その……」
にらむように見下ろしてくる視線が怖くて、声が震える。
私たちはそのまま、互いにどうしていいか分からず、しばし見つめ合った。
何か知らんが、カラ松さんに追いかけられて研究所の中庭まで来た。
うっそうとした木々の生い茂る中庭。
私は壁を背に、カラ松さんに両手をつかれ、困っていた。
「……その……松奈……」
「あ、あの、か、カラ松……さ……ん……」
私も私で声が震えてる。だってマジ顔で見下ろされて怖いし!
研究所の敷地内に入ってしまい、余計にひとけが無いのがもっと怖い。
カラ松さんはしばらく考え、ゆっくり言った。
「……だから、松奈。怯えないでほしいんだ。
俺は君にひどいことをしたから、ずっとそれを謝りたいと……」
「了解です!オールOKです!許します!謝罪を受け入れます!
なのでお帰り下さい。今すぐっ! 可及的速やかに! 超音速でっ!!」
あと謝ろうという奴が、威圧的にこちらを見下ろすものなのか! 脅迫だろ、コレ!
「ありがとう……だが、その……」
カラ松さんはまだ、私を見下ろし続けている。
私はビクつきながらカラ松さんを見上げる。
そのまま、しばらく時が過ぎて……時が過ぎて……。
……イラッ。
「何なんですか! 言いたいことハッキリ言って下さい!」
「ご、ごめんなさい」
短気な私がキレると、一気に気弱な顔になるカラ松さんだった。