第8章 派生④カラ松END
いや別に深い意味はなく、記念に……ホント、深い意味は……。
だけどそんなことで、こんなに喜ぶとか……その……!
「あ、松奈? どこに行くんだ?」
耐えきれず、私はカラ松さんの横をすり抜け、ドタドタと階段を下りていった。
これ以上、赤くなる顔を隠しきる自信がなかった。
…………
研究所への道を、とぼとぼと歩いて行く。
心が乱れてどうしようもない。
高揚する気持ちが半分、罪悪感が半分だ。
ああそうですよ。松奈は最低のクズ女。ビッ○ですよ!!
カラ松さんともっと話したい。
もっと一緒に色んな場所に行きたい。
優しくしたい……優しく、されたい。
そんな願望が、抑えきれないほど強くなっている。
何で? 一松さんにあんなに良くしてもらってて、馬鹿じゃないの?
浮気女、超最低。
もっと最低なのは、その一方で『帰る』意思が揺らいでないことだ。
あと一ヶ月で一松さんともカラ松さんともお別れなのに、恋の悩みとかバッカじゃない!?
……恋、か。
ため息が出る。
一松さんが傷ついた顔は見たくない。私にとって大切な人だ。
カラ松さんとも恋仲にはなれない。一ヶ月後には別れる人だ。
あと一ヶ月、あと一ヶ月。
「…………」
ふと不動産屋の前で足が止まる。
いっそ、あと一ヶ月だけどこかに住めたらなあ。
お金も保証人も無しな時点で、無理だけどね。
肩を落として振り向――足が止まる。
カラ松さん……大慌てで木の陰に身を隠しても、そのキラキラしたラメ入りズボンが陽光を反射しているのですが。
ただでさえ痛い人なのに、ストーカーとか怖ぇ!!
私はダッと走り出す。研究所に入って内から鍵をかけてしまえ!!
「あっ!」
カラ松さんも追いかけてきた。
怖ーっ!! 後ろから走って追いかけてくるーっ!!
「待ってくれ、松奈! 頼むから!」
頼むから追いかけてこないで下さい!!
が、一生懸命走ったけど、あちらは成人男性。
すぐに追いつかれ、並ばれた。
「はあ、はあ、はあ……」
「松奈。その、怖がらないでくれ。俺は君に何かするつもりは――」
併走すんな! ジョギングっぽくなってるし!!
こっちが息を切らしてるのに、普通に会話してくんな!!