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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



 とても信じられるシロモノではないが、次元転送装置を開発した男だ。
 他に頼る物がないなら……信じるしかないのか?

「あとその薬、小瓶に入れて下さいな」

 私は薬を受け取った。


 そして『D.P.LABO』なる研究所の入り口で、私はデカパン博士に念を押されていた。
 正直言って出たくないのだが、元の世界に戻してもらうためには仕方ない。

「この薬を使えるのは一度きりだス。
 どこかの金持ち夫婦にでも飲ませ、子供になりすまして三ヶ月寄生してるだス。
 ワスらはその間に、次元転送装置を作り直しておくだス」
「は、はい……どうも……」

 そして私は着の身着のまま、知らない町へ歩き出したのだった。

 …………

 回想終了。

 そういうわけで私は、三ヶ月間、女一人を養ってくれる素敵なご夫婦を探していた。
「しかしですねえ……」
 昭和の面影を残す下町だ。
 周囲を見回しても、金持ちっぽい人なんてそういるワケがない。
 いかにも社会の底辺にいそうな六人の男性のことを思い出し、暗い気分になる。
「だーじょ、だーじょ♪ ん? お姉さん、何か困ってるじょ?」
「あ、何でもないんですよ。ありがとうね」
 旗を頭にぶっ刺した変態な子供に話しかけられたが、あいまいな笑顔で立ち去る。
 つか変態が多くないか、何なの、この町。

「チミ、可愛いザンスねえ。ミーとお茶するザンスか?」
「いえお構いなく」

 ナンパしてきた異様な出っ歯の男からも離れようとし、立ち止まる。
 彼は話が通じそうだ。

「あの、つかぬことをお伺いしますが、このあたりでお金持ちのご家庭をご存じですか?」
「変な質問ザンスねえ。強盗にでも入るザンスか?」
「入るかっ!!」
 い、いや、だまして寄生しようというのだから、強盗と同類なのかもしれんが。
 出っ歯の男は、意外に真面目に考えてくれた。
「うーむ。この町で一番アレな家なら松野家で決まりザンスけどねえ。でもお金持ちとなると……」
 出っ歯の男は少し考えてくれ、

「弱井家なんかはどうザンスかねえ。確か親父がベンツに乗ってたくらいだし、
一人娘をアイドルにする余裕もあるザンスからねえ」

「ベンツ!?」

 何て上流階級な! それなら三ヶ月、小娘一人養うくらい余裕だろう!

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