第8章 派生④カラ松END
邪魔者は気絶したけど、整理を続ける気になれず、私は出した物を押し入れに戻していった。
カラ松さんはというと、ぎこちなく、
「あ、ええと、こ、子猫ちゃんは何をして、一松とケンカになったんだ?」
まだ仲裁する意思があるらしい。私は素っ気なく、
「別に。押し入れの整理をしていたら絡まれたんです。
もうすぐ出て行くんだから、今から色々と分別しておかないと」
「……帰るのか」
寂しそうな声だった。
あまりにも寂しそうだったので、ついカラ松さんを振り返る。
「……っ!」
私の視線を受け、彼の顔が赤くなった。
い、いや、そんな露骨に赤面されても、対応に困る。
「…………」
「いや、その……」
カラ松さんは気まずくなってしまったらしい。
適当な口実をつけて部屋から出て行けばいいのに。
私は、カラ松さんと今以上の関係にならないと決めている。
それに薬を盛られて関係してしまった一件がある。
もう前みたいに、笑顔で会話は出来ない。
私はカラ松さんに背を向け、片付けを続けた。
「…………」
「…………」
……気まずい。
カラ松さんが私の背を見ていると分かる。
いえ何で私が気まずくなってるの。じーっと見られて怖いし!
あと、そこに一松さんが転がってるんだけど。これどういうカオス!?
無心になれ、無心になれと言い聞かせながら『持って帰りたいもの』を押し入れに詰めていく。
けど無心どころか雑念ばかりわいてくる。
カラ松さん……やっぱりさっきの写真はカラ松さんの、なのかな。
そう思うと自然に顔が赤くなる。
「あ……松奈……」
「は。はい!?」
声をかけられ、考えが読まれた錯覚を起こし、ビクッとする。
「いる物といらない物を分けていたのか?」
「そ、そうですが?」
「もしかして今入れているのは……持って帰りたいものなのか?」
「……ええ」
「そうかっ!!」
え?
曇天から澄んだ夏の青空に。
そのくらいの声の変化だった。
思わず振り向くと、カラ松さんがパアァっと、顔を輝かせていた。
え? 何なのこの人。
「そうか。それは持って帰りたい物なのか!」
「は? え?」
困惑してカラ松さんの視線の先――手元を見てハッとする。
クマのぬいぐるみ。カラ松さんにゲーセンで取っていただいた物だ。