第8章 派生④カラ松END
「大丈夫ですよ。いちいち私のやることに口を出さないで下さい!」
ああもう、恋人同士なのに、一松さんが好きなのに、何でこんなに険悪なの?
泣きそうになる。
「松奈っ!」
一松さんが部屋に入り、私の手首をつかんだ。
「い、痛い!」
「鍵はどこ? いや、いいよ。俺が調べる」
「一松さん、痛い……!」
私の訴えに耳を貸さず、一松さんが私の身体に手を伸ばそうとしたとき。
「止めろ、一松!」
パシッと音がする。
カラ松さんだ。
険しい顔で、一松さんの手首をつかんでいた。
「……ぐっ……! てめえ、何しやがる、クソ松っ!!」
一松さんは殺意をこめて兄をにらむ。
「おまえこそ、松奈から手を離せ。レディに乱暴するものじゃない」
「てめえは無関係だろうが! 何、しゃしゃり出てんだよっ!!」
一瞬、二人が殴り合いのケンカをするのではないかと思った。
しかし何秒かにらみ合い、一松さんはゆっくりと私の手を離した。
いつもはカラ松さんが一方的に殴られているが、彼が本気になったらおそ松さん相手でも軽々と吹っ飛ばしてしまうらしい。力の差は歴然だ。
はあ、と私は息をつく。つかまれた箇所が赤くなっていた。
痛い……すごく痛い。
「一松、松奈に謝れ」
「何でだよ! てめえ、横から出てきて仕切ってんじゃねえよ!」
一松さんはカラ松さんに吠えている。
「一松さん……」
私は恋人の肩をそっとつかんだ。一松さんはすぐに気づき、私に殺気だった目を――。
「松奈、おまえもおま――……っ!!」
ゴンッ!!
私は一松さんに、全力の頭突きをお見舞いした。
「力任せに手首つかんで、いったいんですよ、ボケっ!!」
どさっと崩れる相手に一発、蹴りをかます。
「え? えええ!? は、話の流れ……」
昏倒する一松さんを見下ろし、固まるカラ松さん。
「私に意識を向けてなければ、意外に隙が出来るんですよ」
親指をグッと立てる。
「えー?」
困惑しきった表情のカラ松さん。
この前の一件といい、どうも最近、暴力的になってる気がする。
自重せねば、と一松さんを足で転がしつつ反省する、優しい私だった。