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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



 自分の部屋に戻ると、押し入れを開け、中にしまってある物を全部出した。
 二ヶ月居ただけだけど、結構たまってるなあ。
 お母様に買っていただいたお洋服、パジャマ、日用品、本……。

 あと一ヶ月で私は帰る。

 元の世界に持ち帰れるかどうかは不明だけど、いる物といらない物を分けて早めに整理をしておかないと。

 私は私物の山を二つに分けていく。
 これはいる、これはいらない。これはいらない。
 これはいらないけど、出来れば持ち帰りたい。これは……。

 手が止まる。

 私は順番を待つ風なクマのぬいぐるみを眺め――しばらく迷い『持って行く』の山の上に、そっと置いた。

 さて次は――。

「何してんの」

 後ろから声がかかり、ビクッとする。

 振り向くと一松さんだ。しかし笑顔はない。

「おかえりなさい。パチンコ、負けたんですか?」
「嫌な言い方しないでよ。ツキがなかっただけ」
 だから、負けたんでしょうが。

「ちょっと待って下さいね。すぐ片付けますから」
 けど一松さんは『不機嫌』という言葉を貼り付けたような顔で、こちらを睨んでいる。

「で、何してるの?」
「持ち物の整理をしようかと」
「整理? 部屋を引き払う準備に見えるけど」

 何でこんなときだけ、勘が鋭いんだ。

「直前になったらバタバタしそうだし、時間があるうちに分けておかないと」
 否定してもうるさそうなので、渋々説明した。

「俺は、松奈に帰ってほしくない」
 素直に話したら話したで、やはり機嫌を急降下させる。

「私が帰る理由については、何度もお話しした通りです」

「俺は松奈が家に帰って、幸せになれると思えない!」
「幸せになれないなら、自分で幸せになるからいいですよ」
「絶対にこっちにいた方がいい!」
 怒ってくれる気持ちは嬉しい。すごく嬉しい。
 でもたまに、意地になってるだけじゃないかと思うときがある。
 そして頭ごなしに怒られ、ちょっとムッとする。

「研究所の片付け、今日は私一人でやりますから。一松さんは遊びに行って下さい」

 つい口調が硬くなる。ああもう、ケンカしたいわけじゃないのに。

「そういえば鍵、取り返したんだっけ。どこにあるの。また俺が預かるから」
 一松さんも態度を硬化させる。

「お断りします」
「一人じゃ危ないだろ!」
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