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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END


 カラ松さんはうつむいて、言った。

「……君を泣かせて、ごめん……」

 いや泣いてないっすから。カラ松さんこそ泣かないで。
 そう思いながら、頬をつたう雫をぬぐった。


 一歩を踏み出せない私たちの上で、月は淡い光を放っていた。

 …………

 …………

 研究所で事故があり、カラ松さんと関係を持って。
 告白されかけたけど断って別々に帰って。

 そしてまた日常が戻り、幾日か経った。

 …………

 …………

 あれ以来、私はカラ松さんの存在を避けていた。
 カラ松さんも、寂しそうにしつつもそれを受け入れてくれているようだった。
 ……最初のうちは。

 でもあの研究所での一件で、カラ松さんの心境が変化したらしい。
 以前言っていた『恋の歯車』とやらが、高速回転してるっぽいのだ。

 具体的に何が起きているか。
 ふと視線を感じて目を向けると、たいていカラ松さんが見ている。
 目が合うと、ハッとしたようにすぐ目をそらすけど。

 偶然と言うにはあまりにも頻繁にこちらの動きを目で追われていたり、どうにか理由をつけて無理に話しかけてきたり。

 しかも当人は無意識にやっているらしく、私が非難の目を向けると、すぐ恥じ入った顔になり、こそこそと去って行く。

 結構タチの悪い人だ。

 ……逆に一松さんとの仲は、修復には至ってない。

 決して険悪というわけではないのだ。
 なるべく二人で過ごしたり、研究所で肌を重ねたり。
 以前のようになりたいと、互いに努力してみた。

 でも、以前と何か違う。

 互いに努力しつつも、どこかぎこちなさがある。距離を縮められずにいる。

 結果、私は自己嫌悪がつのり、一松さんはまた一人で出かけることが増えた。

 最悪である。

 …………

 その朝、私は松野家で掃除をしていた。
 一松さんはパチンコに行き、他の六つ子もそれぞれの娯楽に出払っていた。
 といっても一松さんとは後で一緒に、研究所に行く約束だ。
 こちらが家事を終える頃に、パチンコを切り上げて帰ってくるとのことだ。

 ……家事を手伝えや。なんて居候の身で言えませんが。しくしく。

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