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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END


「あ、吸っちゃダメっ!!」

 止めたけど遅かった。
 割れた薬瓶から出たピンクの気体が、カラ松さんの鼻にすーっと入っていく。

「カラ松さん! 大丈夫ですか!?」

 ヤバい。やらかした。何の薬!?

 ――ドクンッ!!
 
 そのとき。カラ松さんの心臓の音が私にまで聞こえた気がした。
 


「ぐっ……」
「カラ松さんっ!!」
 胸を押さえて崩れる彼を抱き支え、薬品室の外に出して、扉を厳重に閉める。
「カラ松さん! ごめんなさい!! 苦しいですか!? しっかりして!!」
「熱い……身体が……すごく……」
「待ってて下さい! 今、救急車を呼びますから!!」

 と言っても、どう連絡したものか。
 ああもう、今どき二人ともスマホを持ってないと来るっ!!
 でもこの状態のカラ松さんを残して外に行くのは……。
 決断出来ず、オロオロしていると。

 顔を赤くし、震えるカラ松さんが言葉をつむいだ。

「松奈……逃げて……くれ……」

「え? は?」

 私を見上げた目は、カラ松さんらしからぬ、ギラついた光を放っていた。
 そして困惑する私に手を伸ばしかけ――止まる。

「ううっ……!! ダメ! それだけはダメだっ!! 絶対にダメなんだ……!」
 激しい苦悩の表情で、髪をかきむしる。

「カラ松さん!! しっかりして! 落ち着いて横になって!」
 手を伸ばそうとして、

「触るなっ!!」

「え……」
 乱暴に振り払われ、何が起こったか分からず固まる。
 けどカラ松さんは一切の釈明をすることはなく、

「今すぐ!! この研究所を出て、外から鍵をかけてくれっ!!
 俺が、自分を抑えている間に……頼む、松奈っ!!
 でないと俺は君に……君を……」

 もしかして、凶暴化とかゾ○ビ化する薬とかなの?

 そうなのかもしれない。だってカラ松さんの身体はガクガクさせ、自分で自分を押さえていられなくなってきてるみたいだ。

 今のうちに逃げた方が安全だろうか。
 でも……。

 もし力任せに身体を壁にぶつけて骨を折ったら、頭をぶつけたら!

 無警戒に薬品室を開けた私の責任だ……。

 せっかくカラ松さんが、一松さんと私を仲直りさせてくれたのに!

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