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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「先に入っちゃおうかなあ……」
 研究所の周囲をグルッと回ったけど、中に人がいる気配もない。

「遅れる人が悪いですよね」
 ついにガチャッと扉を開け、中に入っ――。

「松奈」

「わー!! 入ろうとしてません、入ろうとしてません!!」

 大慌てで振り向くと、一松さんが――あれ?

「え? カラ松さん? 何で?」

 きょとんとして、目を丸くした。
 そこには、青のつなぎ姿のカラ松さんがいた。首元のアクセがオサレである。

 そして屋根から落ちたのに、どうみても無傷。マジ、リスペクトっす。

 カラ松さんは私を見、また顔を赤くして、

「その、伝言を頼まれた。一松の友達の猫の具合が悪いらしい。
 今日は家で友達についているそうだ。松奈には危険なことをするなと」

 あ、そう。ガッカリ。
 久しぶりに二人の時間を楽しめると思ったのに。

 まあいいか。一人でも作業をしよう。
 危険なことはしませんよー。ちゃんと気をつけてやれば危険じゃないしー。
 一松さんは過保護すぎるのだ。私一人でも大丈夫だ。

「ありがとうございます。ちょっと散歩してから戻るって言って下さい」
 と言って、研究所に入ろうとして。

「子猫ちゃん。ここは閉鎖されてるんだろう? 中に何をしに行くんだ?」
 カラ松さんは不思議そう。

「あ。えーと……」
 どうしよう。この場所については一松さんと二人きりの秘密、みたいな雰囲気がある。
 でももう、私たちがここに出入りしてるって、知られちゃってるしなあ。

「その、事情があってここの片付けをお手伝いしてるんです。
 何か借金取りに荒らされちゃったみたいで。まあすぐ終わるんで、今日は一人で――」

「そんな危ないこと、一人でやっちゃダメだろう!」

 一松さんと同じ反応が返ってきた。

「子猫ちゃん。この研究所は俺たちも世話になったことがある。
 だから何が置いてあるかも大体分かる。中が荒らされてるなら、片付けなんて危険だ。
 兄として、許すことは出来ない!」

 さっきは屋根から落ちたクセに。
 つなぎ姿で腕組みされると、ちょっと威圧感がある不思議。
「いえ、ホントに大丈夫ですから。どうしても片付けなきゃいけなくて」

「ダメだ!」

 ちょっと中略。お説教がしばし続いた。

 でも最後に折れてくれたのは、カラ松さんだった。

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