• テキストサイズ

【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END


「いえ別に。おはようございます」
 頭を下げると、
「そうか!? おはよう、マイエンジェル!!」
 パーッと顔を明るくし、私の肩を叩いて二回目のおはようを言った。

「……馴れ馴れしく触るなよ」
 幸せな妄想に浸っていた一松さんは、少し嫌そう。
 でも先日の気恥ずかしい一件があるためか、前ほど当たりは強くない。

「おはよう、ございます」
 私もどう返していいか分からず、二度目のおはようを言ったのだった。

 …………

 私は玄関で靴をはき、見送りの一松さんを振り返る。
「じゃ、先に研究所に行ってますね」
 一松さんは手を上げながら邪悪に笑う。

「俺も後から行くから……期待してなよ」
 何をだ。

 研究所の片付け。それは私が元の世界に戻るために必要な作業の一つだった。
 一松さんは作業に気は進まないものの、私一人に作業させるのは危険なこと、

 そして『研究所をホテル代わりに出来る』というとんでもない理由で、作業を手伝ってくれていた。

「絶対に先に一人で入らないで。鍵をかけ忘れたままだし、中は一人じゃ危ないから」
「了解です」
 ビシッと敬礼。

「勝手に入ったら目薬か座薬ね」

 ……そんなに気に入ったのか、そのネタ。
 そして私は差される側なのか、差す側なのか。
 

 松野家から出ると、ギターの音が聞こえた。
 屋根の上を見るとカラ松さんである。 
 また歌を歌っていた。
「カラ松さーん!!」

 手を振ると私に気づいてギョッとした顔をし、慌てて立ち上がろ――お、落ちたぁっ!!

「ちょっ……カラ松さんっ!!」 
 だが塀の向こうからは弱々しい声が、

「だ、大丈夫だ。マイキティ……この程度のことでは俺は死なない。必ず生きて帰る」

「いえ生きて帰るってか、ご自宅にいらっしゃいますが」

「俺のことは気にせず、己の道を行け……」

 まあ返答出来るなら、死にはしないだろう。ここの人ら、本当に人間かと思うくらい丈夫だし。
 お言葉に甘え、先を急ぐ私だった。

 …………

 …………

 私は研究所の前で、イライラして身体を揺する。
「遅いなあ、一松さん」

 とっくについてても良い頃だろうに、まだ現れない。

/ 422ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp