第8章 派生④カラ松END
「松奈っ!!」
けど一松さんは、カラ松さんを見て立ち止まる。
並んで立つ私たちを見て表情を険しくし、何かを口にしかけた。
するとカラ松さんは私の背を押した。そして珍しく厳しい声で、
「一松。松奈に謝れ。彼女は浮気なんてしていない。昨日のデートも、おまえが冷たすぎて、寂しくて俺を代用していただけだ!」
いや、代用なんて――と言いかけたけど、カラ松さんに制される。
カラ松さんは大きな声で、
「松奈はおまえのことが好きなんだよ!!」
一松さんは黙る。
私たち三人は雨に打たれ、しばらく見つめ合っていた。
そして一松さんがうなだれ、小さく、小さく言った。
「ごめん、松奈……。カラ松、兄さん」
雨が、少しだけ小雨に変わった。
…………
…………
松野家に帰った。おそ松さん命令により、私たちは順番に風呂に入らされた。
そして、えらい怒られた。
まあ、そこらへんは省略する。とにかく怒られました。
最後に、六つ子の部屋に六つ子全員と私が集められた。
そして私と一松さんが向かい合って立たされる。
何。何するの? キス? セクロス? いやー。
すると腕組みしたおそ松さんが言った。
「松奈。一松を殴って」
「は?」
けど一松さんもうなずいた。
「俺を気が済むまで殴って。それで、このことは終わりにするから」
「え? そんな。もう仲直りしたでしょうが! 一松さんを殴るなんて、出来ません!」
「いいんだよ。松奈、突き飛ばされたんだし、おあいこ」と十四松さんまで。
「そうそう。うちはこうやって、殴って殴られて、それで終わりなの」とチョロ松さん。
六つ子のケンカ史が垣間見える言葉だ。
争いを持ち越さず、決定的な亀裂を避ける知恵を、彼らはもう身につけていたのだ。
……殴られっぱなしのカラ松さんはいいんだろうか。
本人は気にして無さそうで、ただ私を見て微笑んでいた。いいんか。
一松さんはもう一度うなずいた。
「いいよ、松奈。俺を殴って」
「いいんですか? じ、じゃあ、軽くいきますよ……」
「分かった」