第8章 派生④カラ松END
ビニール傘を買う金すらない。
いや本当に、本気でどうする。下着まで雨水に浸食されている。
本当は一度へたれて松野家に戻った。
でも、もうお兄さん達は帰ってきていた。
そして、私の書き置きをしっかり読んだ後だったらしい。
どしゃ降りだというのに、また外に駆けだして行くおそ松さんたち。
なぜ探す。どうして探すんですか。
この光景を見て、いけしゃあしゃあと『すみません~。やっぱりもう一ヶ月おいて下さい~☆』なんて出て行けるワケないでしょうっ!!
そもそも、六つ子に亀裂が入るのが嫌で出てきたんだし。
目的を忘れるな、自分。
私は雨の中、また歩き出した。
次に数少ない知り合いを頼ろうとした。
困ったときのイヤミ社長!! 頼むから置いて!! つか泊めろ!!
性的なサービスはしないが、家事くらいはやってやるっ!!
「えー……」
だが、河川敷のプレハブはすでに撤去された後だった。
私は橋の下で、雨水をポタポタ垂らしながら立ちつくす。
奴は薬を上手いこと利用して、より高みに行ってしまったらしい。
「……ん? 薬? 薬って、何だっけ?」
首をかしげる。
『松奈……好きだ……』
私に熱くささやき、抱擁する男性の幻が頭をかすめる。
あれは一松さん……だったっけ……?
思い出しちゃダメ。
心の声がした気がした。
「……ま、いいや。とにかく他の場所を探さないと」
私は橋の下から、どしゃ降りの中に戻った。
…………
「あー、馬鹿だなー。馬鹿すぎですなー、私」
デカパン博士の研究所の敷地内で、頭を抱えていた。
一松さんとかち合うリスクはあるが、もうここしかない、と研究所にやってきたのだ。
なのに、何で研究所の鍵を持ってこなかった!!
ここなら生活の基盤が一通りそろってる。
ここを拠点に一ヶ月の籠城くらい、ワケがなかっただろうにー!!
茂みの中に隠れているが、相変わらずどしゃ降り。
というか雨に打たれすぎて、雨が気にならなくなるレベル。
全身が寒さでガタガタだけど、若いから大丈夫っ!!
「てかアレ、絶対に一松さんですよね……」