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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



 ようやく起き上がったとき、外は曇り空になっていた。
 洗濯物を取り込んでおいた方がいいんだろうか。松野家に土足で上がり込んでいる他人が?

 夕ご飯を作ろうか。家族面をしている不審人物が?
 
 ……いかん。思考がダウナーすぎる。
 しかし落ち込む。

 一番ショックなのは、一松さんに冷たくされたこと。
 次に私が原因で一松さんとカラ松さんがケンカしてしまったこと。

「出て行った方がいいんですかね」

 私の存在は、松野家の害悪になってるんじゃないか。
 薄々思ってたことを、突きつけられてしまった。

 なぜかは分からないけど、一松さんは私から距離を取るようになった。

 カラ松さんは私のことを気遣ってくれたせいで、ケガをした。

 あれ。私、いない方が良くね?

 ズッキーン、と心が最大級に痛む。
 いやいやいや。自己憐憫に浸ってる場合じゃ無いですよ。

 どうせあと一ヶ月だしー。
 二ヶ月、どうにかなったんだから、あと一ヶ月くらい一人で何とかなるっしょ。

 三百万だって、何とかなる、何とかなる。
 というか一松さんに毎日冷たい態度を取られたくない。
 私をかばう優しいカラ松さんが、殴られるのは嫌だ。

『松奈』

 ……優しい笑顔を思い出すと、胸が痛い。
 アイタタすぎて皆にスルーされてるけど、本当は誰よりも優しいお兄さんなのだ。

 兄弟、仲良く暮らしていてほしい。

 私のせいで、亀裂を入れたくない。顔に余計なアザを作ってほしくない。

「そうと決まれば、急がないと」

 立ち上がり、エプロンを外して慌てて手荷物を持つ。
 えーと、書き置き、書き置き。

『お世話になりました。家に帰ります』

 うん。異世界から来たことはまだ知られてないし、これで誰も探さないでしょ。

 しかし迷惑をかけまくった礼が一銭も無しというのは……。
 私は財布を必死にあさる。
 うおお! 五千円しかないっ!!
 仕方なく、書き置きの隣になけなしの五千円を置き、立ち上がった。

 窓の外はますます暗くなってくる。
 やっぱ洗濯物を取り込んでおこう……。

 …………

 …………

 ×時間後、どしゃぶりの雨の中、私は超後悔していた。

 アホか私は。いや今回はマジでアホだ。

 所持金を一切合切置いてくる馬鹿がどこにいる。

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