第8章 派生④カラ松END
その後、松野家に帰った私は、生きていたおそ松さんに非道な迫害を受けた末、
持っていたお札をむしり取られた。
次はちゃんと息の根が止まったことを確認しよう、と思いました。
そして。
「カラ松お兄さん! そのケガ、どうしたんですか!?」
その夜、トイレに起きたとき、カラ松さんを見つけた。
カラ松さんは顔のあちこちを腫らし、居間でこっそり、自分で応急処置をしていたのだ。
驚いて駆け寄る私に、人差し指を口に当て、
「シーッ! 大したことじゃない。おそ松たちとコーヒー牛乳の取り合いでケンカになってしまっただけだ。全く、いつまで経っても子供なブラザーたちだ」
と笑う。私は笑う気になれない。
「もしかしてそのおケガは、一松さんですか?」
カラ松さんの顔に湿布を貼りながら聞く。カラ松さんはハッキリ答えない。
「俺のことは気にしなくていい。あいつは松奈のことが好きなんだ。
それだけは疑わないでやってくれ。きっと仲直り出来るさ」
傷だらけの顔で、そう言って笑ったのだった。
…………
カラ松さんと一緒に遊んだ次の日のこと。
松野家の私の部屋で、私は屍のように転がっていた。
太陽がポカポカと私を照らすが、それすら今の私には断罪の光に感じる。
へこみ。今日の私は燃えないゴミである。
あー、死ね私。このまま死んでしまえ。
胸にぎゅうっと、昨日のクマちゃんを抱っこしている。
目からダラダラと涙がこぼれ、畳を濡らしていく。
そのうち、ふすまがそーっと開いて、声をかけられた。
「あ、あの、松奈。大丈夫?」とトド松さん。
「一松も本気じゃ無いって! ちょっとカッとなっただけ!」とチョロ松さん。
「松奈、松奈、元気出してー!」と十四松さん。
「一緒においで。お兄ちゃん達もついててあげるから!」とおそ松さん。
ちなみに一松さんとカラ松さんはいない。
ケンカの末、現在、お二人とも家を飛び出している。
「ねえ松奈……」
もはや誰松さんか判別する気力さえない。
返答せず屍になっていると、『そっとしておくか』と、ふすまがそーっと閉まった。