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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「こういう言い方だと、どうでしょう?」
 周囲に人がいなさそうなので、カラ松さんを見上げ、一松さんにコクる気で、

「好きです。あなたのことが、すごく好きです!」

 真剣に、でも可愛く見えるように言ってみた。

「どうでしょう、カラ松お兄さん。やはりもう少し上目遣いの方が、男性の方的には――」

 カラ松さんは大きく目を見開き、そして、息を吸った。
 夕暮れの風に髪が揺れる。


「……好きだ。俺も松奈が好きだ!! ずっと、ずっと!! 君のことが好きだったっ!!」
 

 カラ松さんは大きな声で叫び、そして目をギュッと閉じて、うつむく。

 そして数秒後に目を開けたときには笑顔だった。

「――という風に一松なら応えてくれると思うぞ。
 さっきの子猫ちゃんの可愛い告白を聞いたのなら」

 あまりの似てなさに私は笑うしかない。

「いや、一松さんって、そこまで好きだ好きだとか、連呼しないと思いますよ」
 ボソボソと『あ、そう』と答えるのが関の山だろう。

「そうだな。想像がつかないな」
 とカラ松さんも笑い、
「それじゃ悪いが、そろそろ俺は、ロッカーに入れた俺のパーフェクトファッションを取りに行ってくるよ」

 え。いきなりですな。
 そういえば着替えるとき、カラ松さんの服をコインロッカーに入れてたんだっけ。

『レンタル彼氏』はそろそろお開きのようだ。

「今日は本当にありがとうございました。かなり延長しちゃいましたね。何時間でしたっけ」
 お札を出そうとすると、スッと目の前にお札を出された。

 私がカラ松さんに最初に払ったお金だ。

「これは返すよ。一松とのデート代に使うといい。
 俺にはマイエンジェルの天使の笑顔が、何よりの報酬だ」

「あ、カラ松お兄さん!!」
 エンジェルと天使って、被ってるから!――と言おうとしたけどカラ松さんはもう土手を走り去っていた。
 私はクマのぬいぐるみを抱えたまま、少しの間だけ、そこに立っていた。

 そしてポツリと呟いた。


「何でカラ松さん、泣きそうな顔をしていたんだろう」


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