第8章 派生④カラ松END
「ど、どうだ?」
店から出てきたカラ松さんは、パーカーにジャージ姿となり、かなりニート感がアップしていた。私は腕組みし、
「似合っています」
「いや、その答えはちょっと」
どう返答すればいいんすか。
「もう少し猫背になりませんかね。あと眉の角度を緩くして」
「眉の角度までは……」
カラ松さんは、困ったように私を見る。
「一松とデートがしたいのなら、あいつに直接頼めばいいんじゃないか?」
まだ私にレンタルされるのが、気が進まないみたいだ。
「…………」
一松さんと同じ顔のカラ松さんに、一松さんになりきってデートしてもらう。
それが『レンタル彼氏』のカラ松さんに頼んだことだった。
「一松さんなんて、知りませんよ。最近、急に冷たくなるし、話をしても素っ気ないし!」
私はむくれる。
「そ、そうだったのか!?」
カラ松さんはなぜか、ものすごく焦った顔になる。
「松奈。何だったら、この兄が手を貸そう!
松奈と仲直りするように、あいつを説得しよう!」
「一松さんと仲直りなんてしたくありません!」
「え、でも俺に一松の格好をさせているのは」
「そんな揺れる乙女心!!」
「…………」
「行きましょう、『レンタル彼氏』なんでしょ?」
紫のパーカーを着たカラ松さんの腕を取り、甘えた声を作る。
「……分かった」
見ると、カラ松さんは決意した顔でうなずいていた。
「マイエンジェルがそんなに一松を好きなら、一松になりきってやろう」
そう言いつつ、なぜか顔が真っ赤だ。
隠そうとしてるけど口元が時折ゆるみ、すごく嬉しそうにも見える。
そこまでデート相手に飢えていたんだろうか。
「よし。今から俺は一松だ。ではどこに行くにゃあ?」
「最初から間違ってます」
演技力には期待出来そうに無い。
…………
「やはり猫さんは鋭いですね」
デートと言うことで、まずはいつもの猫集会場に来た。
猫たちは警戒気味だ。
顔なじみの人なつこい子が数匹、私にすりすりするだけ。
「顔が同じでも、あのねじ曲がった、世捨て人な雰囲気が無いと無理ですか」
「すまない、マイキティ。一松になりきれてやれなくて。ほら、猫、こっちに来るにゃあ」
自分のせいではないのに、カラ松さんは申し訳無さそうだ。
「だからその語尾は違いますからね」