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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「ど、どうされたんです、カラ松お兄さん。痛……変わったことを始めちゃって」

 観念して愛想笑いで答えた。
 すると松野家次男はキザっぽく髪をかきあげ、

「フッ。カラ松ガールズは、いつも遠慮して俺に声をかけてこない。
 そんな慎み深い彼女たちに手を差しのべるべく、あえて俺という男に価値をつけた次第だ」

 一切合切、意味不明である。『女の子とデートしたい』という本音だけは分かったが。

「それじゃ、頑張って下さいね。では――」

 と、きびすを返しかけ……立ち止まる。
 振り向き、カラ松さんの顔をジーッと見る。
「フッ。この兄に見とれたか? 子猫ちゃん。だが今日の俺は安くは無い」
 ジーッと見る。

「どうした。その熱い視線。溶けてしまいそうだぜ」
 ジーッと、ジーッと見る。

「……いや、だから、あの……」
 カラ松さんは怯えた表情だ。一方、私は、

「一時間、五千円……」
 ボソッと呟く。
「っ!!」
 カラ松さんがサッと値札を後ろに隠した。
「何で隠すんです」
「い、いや……その、つい……」

 私は財布の中身を確かめる……あった。たまたま五千円あった!!
 私は満面の笑みで五千円札を出し、

「カラ松さん、じゃあ一時間――」

「わわわ悪いな! たった今、タイムセールで一時間一万になったところだ!!」

 タイムセール?

「うーん。一万円だと足りないです……」
 カラ松さんは心底からホッとしたように、

「ざ、残念だったな、マイキティ。大人の女になったら、また来るといい」

「あ、松奈ー!!」

 そこに脳天気な声が響いた。おそ松さんである。
 赤いパーカー姿でスキップしてきて、

「松奈ーっ! お兄ちゃんと遊ぼー!!」
 私の真横にいる実弟のことは、存在ごとスルーしているようだ。
 それはさておき。

「おそ松お兄さん、ちょっとこちらに来て下さい」
 私はおそ松さんの手首をつかむ。
「え? 何々? 路地裏に引っ張っていって、まさか俺を襲うつもり? ヤダ! 松奈ったらエッチー!」
「まあまあ」
 私はかまわず、おそ松さんを、狭い細道に引きずり込んでいった。

 十分後。

 路地裏から出てきた私は、お札の枚数を数えながら、

「とりあえず×万円は確保しました」

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