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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「どーこが、悪い男なんですか」
 相変わらず言ってることが支離滅裂だけど、こんな良い人はいない。

 では、と頭を下げ、一松さんのところに向かう。

 嬉しさと、胸にかすかな痛みを抱えながら。

 …………

 …………


「はあああー……」

 わたくし松奈。この世界に来て二ヶ月と××日。
 元の世界に戻るため、悪あがきの最中である。
 今日も今日とて、松野家の家事を終わらせ、街を一人歩く。
 天気が良い。人通りも多い。今日は休日のようだ。
 楽しそうな街を歩きながら、私はため息をつく。

「どうしたんだろう、一松さん」

 最近、一松さんが冷たい。少しずつ距離を置かれている。
 話しかけても素っ気ないし、一人で、もしくは兄弟と出かけていってしまう。
 今日も声をかける間も無くパチンコに行ってしまった。 

 飽きられた? 一瞬、胸がズキッと痛む。

「うーん。でもですねえ……」

 素っ気ないと思いきや、一松さんはたまに、私をじっと見ているときがある。

 その威圧感が半端ない。

 どう表現すればいいのか。執着? 愛憎? 憎悪? 怨念?

 よく分からん。闇のオーラを感じすぎて、正直怖い。

 けど、そういう目をする理由が分からない。
 私が一松さんをフッたとかならともかく、私たちは恋人同士だ。
 愛情表現は怠ってないと思うんだけど。
 素っ気ないのは一松さんの方だけである。

 うーん、分からん。難しいことは苦手だ。
 何の闇を抱えてるか知らないけど、言いたいことがあるなら、私に直接、言えばいいのに。
 一松さんの真意に悩みつつ、歩いていると、

『何アレ』『超痛いんですけど』『笑える~』

 通行人の方々が、クスクス笑うのが聞こえた。
 何となくその方向を見――見たことを後悔した。

『レンタル彼氏 一時間五千円』

 そんな札を掲げたサングラスの男が。
 白昼堂々、人通りの多い街中で立っていた。
 どこかで見たような顔、不敵な笑み。革ジャン。ラメ入りのパンツ。

 私は数秒硬直し、そそくさと歩き出した。
 見なかった。私は何も見なかった!!
 だが。

「松奈!! どうした、マイキティ!! おーい!!」

 キメ顔からアッサリと素の笑顔に戻るな!!

 通行人の皆様が見ているでしょうがっ!! 主に同情の目で!!

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