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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第8章 派生④カラ松END



「……終わり、たくない……」

 睦言ではなく独り言のように言われた。
「私も……です……」
 手を伸ばしてキスをねだる。
「そう、だね……」
 カラ松さんは切なそうに笑い、
「ごめん」
 とだけ言ってキスをする。

「……っ……っ……っ……」

「あ……ひっ……あっ……あっ……」 

 そして視界が真っ白になり、数瞬遅れ、彼も私の中で果てた。

「好き、です……」

 覚めやらぬ興奮の中、微笑んだ。

「俺もだ」

 そう言ってカラ松さんは優しく私にキスをしてくれた。

 …………

 …………

 松野家に帰りながら、私はすっきりしない頭を抱える。

「川に落ちた? 何か記憶がないんですよね。私、何をやってたんでしたっけ?」
「危ないところだったんだぜ。次からは気をつけな、子猫ちゃん」

 隣を歩くカラ松さんはキザったらしく前髪をかきあげる。
 どうも昼前から昼過ぎの記憶が飛んでいる。
 川に落ちてカラ松さんに助けられたとのことだが、覚えていない。
 でも身体からはボディソープの匂いがするし、服も着替えさせられている。

「……もしかしてカラ松お兄さんが私を風呂に……」
 引くわー、ドン引くわー。
「まさか。ちゃんと自分で入ったんだ。混乱してて覚えていないのか?」
 覚えていない。でもカラ松さんが私を風呂に入れるわけないし、通りすがりの人がするわけもない。

「覚えていないのか? 子猫ちゃん」
 でもカラ松さんに自信を持って言われると、本当に川でおぼれ、自分で風呂に入ったような記憶が……ある気もしてくる。

「ありがとうございました、次から気をつけます」
 とりあえず深く頭を下げた。
「礼儀正しいな。人の良い子猫ちゃんだ」
 そして。

「あ、一松さん!」

 嬉しさに、ちょっと声が弾む。
 道の向こうに、私を迎えに来たんだろう一松さんが見えた。

「それじゃカラ松お兄さん。今度、改めてお礼をさせていただきますんで」
 また頭を下げる。後ろで、一松さんが機嫌を悪そうに鼻を鳴らすのが聞こえた。 

 ちょっとくらい、いいでしょうが!!


「必要ないさ。松奈は大事な妹だからな」
 カラ松さんはサングラスをかけ直す。
 その下の瞳を私に見せまいとするかのように。

「次からは気をつけるんだぞ。俺のような悪い男につけこまれないように」


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