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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月


 腕を引っ張って起こされた。
 パジャマ姿のまま目をこすり、チョロ松さんの後をついていく。

 うーん……何か昨日は小っ恥ずかしいことが山ほどあったような。
 けどやっとこの人たちを『兄さん』と呼ぶことが許されるような気になったのである。
「松奈が来たよ」

 チョロ松さんがふすまを開けると、そこに残りの六つ子がそろっていた。

「松奈、遅い遅い」
「相変わらず手間のかかる奴だな」
「松奈ー。食べよう食べよう!! 野球しよう!」
「フっ。今日もお寝坊さんだな、我が妹よ」
「さ、座って座って!」

 あかん。パジャマだから誰が誰の発言か分からん。
 いや一部は分かるけど……。

「さあ、食べよう」
 ちゃぶ台には、七人分のご飯とお味噌汁、卵に焼き海苔に納豆。それとお漬け物。
『いただきまーす』
 七人の声がそろい、ハシを動かす音がする。

 窓の外は昼空。風が吹いていいお天気。
 ……て、昼まで寝てたのか。早起きしてお母様の家事を手伝う予定がっ!!

「おそ松兄さん、しょうゆ取ってー」
「海苔は一人一枚だよ」
「十四松。ご飯粒がついてる」
「終わったら皆で野球しよー!!」
「しねえよ」
 ワイワイガヤガヤ。ほどなく全員が食べ終わる。

「お皿、置いておいて下さいね」

 私は台所で七人分のお皿を洗う……いや結構大変だなコレ。

 洗い物を終えてからは私服に着替え、畳の上で大きく伸びをする。
 無職六人も動き出したみたいだ。
 部屋の外からは誰かが廊下を歩く音、会話をする音、『いってきまーす』と誰かが出かける音。
「あー……」
 静かだ。時間がゆっくり流れる。
 あ、窓から猫が入ってきた。
 私のお腹に乗り、ごろごろと喉を鳴らす。
 のんびりするなあ。

 私は大の字になったまま目を閉じ、そのまま午睡を……。

「――て、それじゃダメでしょう!」

 飛び起き、びっくりするにゃんこを放り、ドタドタと廊下を走る。

 そして『ブツ』を用意し、自分の部屋に戻ると、ちゃぶ台の前に正座する。

「何やってんの?」

 と面倒くさそうに話しかけてきた一松さんに、にゃんこを渡し、

「また履歴書を書くんです!」
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