第7章 派生③おそ松&チョロ松END
「…………」
しかし失礼ながら、彼相手なら多少は強く出られる。多少は。
「チョロ松お兄さん。私に協力してくれるんじゃなかったんですか?
何でおそ松お兄さんにそそのかされて、こんな馬鹿なことをするんです」
「その……それについては、俺もおそ松兄さんを説得しようとはしたんだけど……」
よし、予想通り、弱気になっている。でもまだ、腕をつかむ力は弱まってない。
「同じ事をさっきも仰ってましたよね。思うだけならタダですよね。
成人された男性の方が、たかが長男だからというだけで、逆らえないって仰るんですか?」
けどチョロ松さんも、目をそらしつつ、
「……でもさ。松奈だって、俺のことを嫌がらなかったじゃない。
この前の夜も何だかんだで、おそ松兄さんのことを受け入れたって聞いたよ?」
……痛いところを突かれた。
そして夜這いの戦果を話したのかクソ長男。
チョロ松さんは私に向き直ると、私の両肩に手を置いた。
「松奈はいい加減すぎるよ。誰が相手でも喜んじゃってさ。
おそ松兄さんにまで、いい顔をするなんて正気じゃない。
かといって不安定な一松に支えきれるとも思えない」
「は、はあ……」
「君にはもっと、しっかりした大人の恋人が必要だと思うんだ」
……えーと、チョロ松さんの中の私のイメージって、どんだけ底辺なんすか?
「チョ~ロ~松~く~ん~?」
そしてクズが来た。安財布をしまいながら出てきた。手をパキパキ鳴らしながら、
「抜け駆けとか、ずいぶん成長したよね。お兄ちゃん、感動だわ」
殺す気満々な長男にギリッと歯を食いしばる三男。
「一松を一人で相手にするのは面倒だから、組もうって話だったろ?
思い出してくれれば、お兄ちゃんも寛大に許してあげるからさ」
……なるほど。
この頭のおかしい告白。正気じゃ無いと思ってたけど、男兄弟の力関係が背景にあるらしい。
一松さんのカーストは決して低くない。
しかも一松さんには、存在自体がカオスな十四松さんまで味方についている。
「乗り気じゃないなら、俺は俺一人で一松と戦ってもいいけど。
松奈も恋愛は一対一って言ってたし~」
と、チョロ松さんから私の肩を奪い、抱き寄せる。