第7章 派生③おそ松&チョロ松END
「いえ、ですから私は一松さんの――」
けどおそ松さんは私の肩を抱いたまま、半ば強引に歩き出し、
「え? どこ行くの、松奈、おそ松兄さん?」
「はあ? 分かるでしょ。ここからは大人の時間。
今なら終電、走れば間に合うんじゃない?
じゃあな、チョロ松。一松には上手く言っといて」
手をひらひら振って、私に歩かせる。
「いえ、ですからおそ松お兄さん、聞いて下さい! 私は――」
「ま、待ってよ、おそ松兄さん!」
おそ松さんは立ち止まり、冷たく三男を振り返る。チョロ松さんは少し沈黙し、
「……その、松奈は不安定な子だし、おそ松兄さんがこの子にひどいことを
しないかどうか、俺が見てないと……」
これまた最低の答えを返した。
「あっそ。じゃあ、行こうか。松奈も待ちくたびれてるし」
おそ松さんは笑う。
私の意思、完全に無視ですか?
そ~っと、おそ松さんから身を離そうとすると、ガシッと強く抱き寄せられる。
あ、あれ? 私、また選択肢を間違った?
ボケーッと待ってないで、全力で逃げるべきだったんじゃない?
すると私の考えを読んだかのようにおそ松さんが、私の肩を撫で回しニヤニヤと、
「まあまあそんなに緊張しないでさ。楽しくおつきあいしようよ。
俺たちも、君に飽きられないよう、努力するからさ~」
何の努力をするというのだろう。
チョロ松さんも、さりげなくおそ松さんの反対側に立ち、優しく微笑んだ。
「大丈夫だよ。松奈。俺、君との交際は真面目に考えているから」
最近思うんだけど、おそ松さんよりタチ悪くないか、この人。
…………
…………
はい、回想終了。
今は全てが終わり、私は放心している。
バスルームに湯気が濃い。
むせそうなアロマの匂いで逆に気分が悪くなりそうだ。
「あー、気持ち良かった。松奈、元気?」
元気なワケ、あるか……。あと濡れた手で頭を撫でるな。
湯船の中で後ろから抱きしめられながら、心の中で毒づく。
「おそ松兄さん、しつこいよ。松奈をゆっくりつからせてあげないと」
いや、胸を触るな三男……。