第7章 派生③おそ松&チョロ松END
この会話、長引くと不味い気がする。分かるように意思表示をして、さっさと帰る!
「お・こ・と・わ・り・です! 他のお相手を探して下さい。
私なんかで妥協とか、お二人ともどれだけ飢えて――」
「そんなことはないよ! 松奈は、すごく可愛い! な、チョロ松!」
会話に入り損ねてたチョロ松さんも笑う。
「あ、うん。俺も大好きだよ。目が合うといつも笑ってくれて、家に帰るとエプロン姿で『おかえりなさい』って笑顔で……」
決めた。これから元の世界に帰るまで、チョロ松さんには微笑むまい。
あと『おかえりなさい』は『お疲れ様でした』に変更しよう。
……そうじゃない。今、すごく危険な状況だ。
「だから何度もお話ししたとおり、私には一松さんがいますから。
今後、一切近寄らないで下さい。じゃあ帰りますから」
「松奈」
立とうとすると、また腕をつかまれる。力が強い。
渋々座ると手を離され『良い子』と、また褒められる。
「ち、チョロ松さん」
チョロ松さんを見る。こうなったら片割れを崩すしかない。
奴の方は多少は後ろめたいのか、目をそらして酒を飲むフリをした。
「チョロ松さんはそれでいいんですか? 色々無理ですよね、これ」
「え!? お、俺は……」
さすがチョロ松さん。これが異常だと思う感覚があったらしい。
私から目をそらし、赤い顔でお酒を飲む。
何かに葛藤するような顔でチラッと私を見、真っ赤な顔で、
「俺は……あの夜から君の顔が、だんだん……頭から離れなくて……」
「チョロ松~。何かマジになってない?
そういう意味だったら俺も松奈を譲る気はないんだけど?」
「わ!」
おそ松さんが立ち上がって、私の肩を引き寄せたので、椅子から落ちるところだった。
そしたら、今度は私の手を引っ張って立ち上がる。
「真剣な話をする場所じゃないし、そろそろ出ようか」
え、どこが真剣だったんすか? 今までの話し合い。
階段を上がり、フラフラとバーの外に出て、酒気に当てられてほてった頭を冷やす。
夜の繁華街は、怪しげな客引きや千鳥足の酔っ払いばかり。
今なら逃げられる。私が一歩踏み出しかけたとき、
「どこに行くの?」
パシッと腕をつかまれた。
慌てて振り向くとチョロ松さんだ。