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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第7章 派生③おそ松&チョロ松END



 てかチョロ松さん、私の味方をしてくれるんじゃなかったんですか!?
 本っっ当に口先だけのクズだな、あの人っ!! 
 ……いや、三男だけでは長男に太刀打ち出来なかったと見るべきか。

 一番クズなのに、何でこんなのがリーダーなんですか、松野家六つ子っ!!
 
「ほら行こう、松奈」
「!!」
 腕をつかまれ、引っ張られた。
「ちょっと、おそ松兄さん!」

「何なら一松も来る? 俺、心が広いから、独占するつもりもないし」

「な……っ……」
 一松さんも私も、開いた口がふさがらない。
 だが、今度こそ見限る準備が出来た。

「離して下さいっ!!」

 おそ松さんの腕を強引に振り払うと、一松さんの後ろに走った。

「!」

 瞬間の一松さんの反応は劇的だった。

 私を背でかばい、別人のような顔で長兄をにらみつける。

「おそ松兄さん。俺の彼女に近づかないでくれる?」

「えー、お兄ちゃん、間男扱い? ちょっと遊びに誘っただけだろ? 傷つくなあ」

 クズ長男は逆ギレのブーイング。そしてすねたように、そっぽを向く。
 ……この人、マジで私より年上なんだろうか。

「いいよ。じゃ、チョロ松と競艇に行ってくるから」
 外れろ、大損しろ、と心で念じながら、クズの背中を見送る。
 一方、ようやく緊張を解き、猫背に戻る一松さん。

「あの、一松さん……どうも……」
「……あいつ、ハッキリ言わないと分からない馬鹿だから」

 仮にもさっきまで『兄さん』と呼んでた相手にその物言いですか。
 しかし振り向いた一松さんの目には、少しだけ光が戻っていた。

「あいつのこと、好きになったわけじゃないんだよね?」
「当たり前です!」

 ……言えた。やっと言えた。

「あ、松奈!」
 一気にへたり込んでしまう。そして思ったより、この件を一人で抱え込んでいたと気づかされた。一松さんは、私の前にしゃがみ、私の手を取る。

 そしてキスをした。

「良かった」
 声が震えていた。一松さんも悩んでいたのか。

「嫌なら拒否して。ダメなら俺に頼って」
「はい」

 兄弟の仲に波風立てるまい、と思ってたけど間違いだったらしい。
 そして一松さんは、私の手を取り、立ち上がる。
「松奈、出かけよう」
 声が明るい。

「はい!」

 私も久しぶりに笑顔になれた。

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