第7章 派生③おそ松&チョロ松END
「何でシーツを干してんの」
「っ!!」
二階の物干し台で布団を干していると、そう言われた。
振り向くと一松さんである。
目の下のクマが……ものすごいのですが……。
「い、いえ、その、お水をこぼしてしまいまして……」
私に向ける視線に怨念すら感じる。いや憎悪だろうか。
確実に何かに気づいている。
「最近、おそ松兄さんたちとよく出かけるよね。どこに行ってるの?」
「あ……その……」
私は口ごもり、後じさった。だが一松さんは、自虐的にフッと笑う。
「別にいいけどさ。どうせ六つ子で、誰でもみんな同じようなもんだし。
つきあうなら、多少は働く見込みのある奴の方がいいよね」
自分が働く方向については全力で否定か。別にいいけど。
「でもその点に関しては完璧にドングリの背比べです」
私たちのことは、気づいてたか。まあさすがに気づくよね。
チョロ松さんはまだしも、おそ松さんは隠す気ゼロだから。
「あのさ」
と、一松さんが言う。
着すぎてくたびれたパーカー、だるっとしたジャージ。ぼさぼさの髪。
「俺、こういうの、すごく嫌いって言うか……ハッキリさせて欲しい方なんだけど」
ついに来たか。いつかは来ると思っていたけど。
一松さんの握ったこぶしが、かすかに震えている。
口調は平静そのものだが、顔は真っ青で、汗が浮き出ている。
「松奈は……、僕……お、俺を……す、す――」
「おーい、松奈ーっ!」
脳天気な声が、雰囲気を粉々にぶち壊す。
おそ松さんが手を振って陽気に歩いてきたところだった。
「何、一松? 何々? 二人でホテルに行く相談? 俺、邪魔しちゃった?」
「あ……」
一松さん。戸惑った顔になり、冷や汗を流す。
「え? 話、もう終わった? そうなんだ」
いや誰も何も言ってませんよ!!
「じゃあ松奈。出かけよっか! チョロ松も待ってるって」
「え……。チョロ松兄さんも?」
とは一松さんの声。私に一瞬向けられた視線には、『おまえ、どういう趣味?』と、ザックリ心をえぐるものがあった。