第7章 派生③おそ松&チョロ松END
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最近、悩み事が多い。
「一松さん。家事が終わったので――」
「パチンコ行ってくる」
ガラガラ、ピシャンっと、目の前で玄関の引き戸が閉まる。
私はエプロンのすそを握りしめ、はーっとため息をつく。
一ヶ月目の悪夢再び、である。
最近、一松さんと気まずい。
もちろん一松さんとは今まで通りに恋人で、二人で出かけることも多い。
そんなとき、一松さんはすごく優しい。私もすごく楽しい。
なのに最近、こうして素っ気なくされることが増えた。
理由はもちろん――。
「あれ? 一松の奴、また一人で出かけちゃったんだ」
ふいに真後ろで軽い声が聞こえる。
と思うと肩に手を回され、誰かに引き寄せられた。
赤いパーカーが見える。
「松奈が一松を追いかけてったから、お兄ちゃんも急いで追いかけてきたんだよ。
いやー、本当にラッキーだったよ。ね、松奈!」
おそ松さんである。私の肩に馴れ馴れしく手を回し、ニカッと笑いかけてきた。
「じゃ、お兄ちゃんとデートしようか!」
以前、同じようなことを言われたことがある。
あのときは純粋に退屈しのぎ。
今は――別の意味を含んでいる。
「いえ、私も出かけますので」
私は私で、研究所の後片付けがある。
彼のように暇ではないのだ。
足早に彼の横を通り過ぎようとして、
「松奈ー! お兄ちゃんとまたエッチなことしようよ!」
「っ!!」
家中に聞こえるような大声で言われ、バッとおそ松さんを振り返る。
すると彼は嬉しそうに笑い、
「あー、やっと振り向いてくれたー!」
「玄関先で大声で言わないで下さいっ!!」
万が一、一松さんが忘れ物か何かで戻ってきて聞かれたら!
「松奈が俺を無視するからいけないんだろ? どうせ家には誰もいないよ」
へらへらと笑う。確かに、今、家にいるのは私たちだけだ。
しかしこの状況に、別の意味での不安感も覚える。
以前なら、別にどうともない状況だったけど。
「っ!!」
ぐいっと引き寄せられ、おそ松さんにキスをされた。