第6章 派生②一松&十四松END
「美味い。今日も実にDelicious! なあ皆!?」
「こら、キュウリを俺に押しつけるなよ!!」
「誰、卵焼きを一個多く取ったの~」
「え? 一人二個じゃなかった?」
「しょうゆ取って――て、誰がソースを渡せって言った!!」
「卵焼きにはソース一択だよおおおっ!!」
野郎六人は朝から騒々しい。
…………
お母様とお父様をお仕事にお送りして、家事を一通りすませて、私は二階に上がる。
「一松さーん! 十四松さーん! そろそろ行き……あれ? どうしたんです?」
一松さんは仲良しの猫を膝に抱え、心配そうにしている。
猫は、元気なくグッタリしていた。
他の六つ子もそれを囲み、ちょっと心配そう。十四松さんが、
「松奈。友達の具合が悪いんだって。一松兄さん、これから動物病院に行くって」
「えええ! そ、それは大変! 私も一緒に行きますからっ!!」
あたふたとその場を右往左往するけど一松さんは、
「いいよ。十四松と映画に行ってきて。予約なしだし、遅くなるかもしれないから」
うーん。今日は三人で洋画を観に行く予定だった。
落ちこぼれの高校教師が、弱小野球チームを立て直し~という手垢のつきまくった設定だが、本人役で出ているメジャーリーガーが、十四松さんの好きな選手だそうな。
私も一松さんも、十四松さんが公開日を指折り数えて待っていたのを知っている。
「いえ、でもでも……」
オロオロする私に、
「二人で病院に行ってもどうしようもないでしょ。早く終わったら、後から追いかけるから」
と、友達を抱きかかえ、立ち上がる。
「十四松、後は頼んだ」
「分かった、一松兄さん!」
十四松さんは元気に笑う。
そしてふすまが閉まり、トントン……と階段を下りていく音。
「は~、恋人より猫を優先とか、ドライになっちゃって」
「チョロ松お兄さん。これでお友達より私を選ばれたらドン引きですよ」
「一時はあんなにベッタリだったのにさあ。ねえ松奈。そろそろ僕に乗り換えない?」
「そういうことは冗談でも言わないで下さい、トド松お兄さん」
「じゃあ俺たちもパチンコ行こうよ。新台入荷したんでしょ?」
「ああああっ! そうだった。早朝から並ぶ予定がーっ!!」
「もっと他の理由で早起きしてもらえませんかねえ、おそ松お兄さん」