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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第1章 最初の一ヶ月



「す、すみません!」
 店にいるのは不良というよりゲームオタクっぽい人ばっか。
 聞こえるのはゲーム音ばかり。
 それぞれのゲームに静かに没入し、互いに干渉はしないようだ。

 しかし何なんだ、インベーダーゲーム喫茶店って!!
 テーブルがそのまんまゲームの筺体(きょうたい)になってますよ!!
 コイン投入口とかジョイスティックとかボタンがついてるし!!
 あと画面がカラーじゃなくて白黒っ!! レトロにもほどがあるわーっ!!

「じゃあ紹介料払ってほしいザンス。三千円くらいでいいざんすよ~」
「高っ!?」

 しかしイヤミ氏が引きそうにないので、渋々三千円払ったのだった。腹いせに通報されても困るし。
 そしてルンルンと彼が店を出て、後には私が残された。
 私はとりあえずコーヒーを頼み、しばらく迷ってコイン投入口に百円を入れた。

 一松さん、お金を遊びに使っちゃってごめんなさい。


 画面に出てきたのは何列かのインベーダーと自機。
 スコア表示には現在の点数0、前の客が残しただろうハイスコアが誇らしげに表示されている。
 ジョイスティックで自機を左右に動かし、隠れ場所っぽいとこで敵弾をしのぎつつ、ミサイルボタンで地道にインベーダーを撃っていく。
 チューン、バキュンバキュン。ピロピロ。

「昔はこんなのが流行ってたんですねー」
 単純なゲームだこと。当時は、社会現象になるくらい大ヒットしたらしいが。
 今なら小学生でもプログラミングで作れるだろうに。
 当時はそれだけ娯楽がなかったんだろう。何せファミコンが出る前だしなあ。
 昭和の人々を気の毒に思いつつ、撃っていく。
 簡単にゲームクリ……。

「え」

 うわ、油断してたらアッサリとゲームオーバー!!
 だ、だが軍資金はまだある。インベーダーどもはゆっくりなのだ。
 こうやって、堅実に撃っていけばハイスコアなんてアッサリ更新――。
「あ!」
 また全滅。あれ、UFO撃ったら一気に点数が入った! ラッキー!
 と思ってたらもう残機ゼロ?! うわああああ! ゲームオーバー!
 いや待て待て。コツがちょっと分かってきた。

 もう一回! もう一回!!

 単純さゆえの中毒性。私は気がつくと夢中になって撃っていた。
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