第6章 派生②一松&十四松END
一方私はダダっ子モードに突入。
「可愛がっていただけないのなら、また逃げますよー!!
単独行動して、お金を稼いじゃいますからーっ!!」
「またそう言う……」
苦言を呈しかけ、一松さんが止まる。
「…………」
一松さんは私を見下ろし、考え込む表情になる。
「十四松さんーっ!!」
「松奈~。ど、どうしよう。どうしよう、一松兄さん……」
そこでフッと正気に戻る。
薬の効力が切れたっ!!
「た、助かったー!!」
純度の低いやつを渡されたのか、イヤミ社長にだまされたのか。
あの嵐のような衝動は去った。もう正気だ。二人をご主人様と仰ぐ気はゼロだ。
「えー、もう戻っちゃったの?」
ガッカリしたような十四松さん。
おズボンに意味ありげな膨らみが見える気がするが幻覚だ。絶対に幻覚だっ!!
「いやあ、人間、やっぱり中身ですよね。変なお薬に頼っちゃいけないですよ」
「何だかよく分からないけど、松奈は好きー!!」
と、十四松さんと笑い合って。
そして。
「十四松、松奈を襲っていいよ」
あ?
何という笑えない冗談を。
「一松さん。薬の効果は終わりました。こちらも悪ふざけしてすみませんでした。
謝りますよ。だから機嫌を直して、悪趣味な冗談を止め――」
「冗談? まだ薬はキレてない。おまえは口ではそう言っているけど、実は俺や十四松に抱かれたいと思ってる――だよな、十四松?」
部屋の温度が下がった気がした。
怖いのは、一松さんが完全に無表情になっていることだった。
「……ええ!? 兄さん?」
何この人。何なの。
「……よして下さいよ。ホント、笑えないから」
後じさる。一松さんの顔は、あまりにも普通だった。
いつも通りに冗談を言いそうな顔で、私に一歩近づく。
「ちょっと、覚悟しておいた方がいいよ。
こいつ体力馬鹿だし初めてだから、多分一回じゃ終わらないと思う。
でもいいよね。抱かれたがったのは――そっちなんだから」
どうして。さっきまでありえないって言ってたのに。
「ね、ねえ一松兄さん。いったいどうしちゃったの? 僕はさっきのは冗談で……」
十四松さんが、怯える私の前に立つ。私は十四松さんの足にすがらんばかり。
「ほら、十四松さんも引いちゃってるじゃないですか」