第6章 派生②一松&十四松END
枕を投げ飛ばさないで下さい。仕方なく一松さんにおかゆを渡す。
「えー、僕にくれないのー?」
『あーん』と口を開けてスタンバイしてた十四松さんは、心底からガッカリした様子。
私は代わりに十四松さんの頭をなでなで。
パッと嬉しそうな顔になる十四松さん。
「松奈~」
とすり寄られた。
十四松さんにはこの二ヶ月でずいぶん懐かれたなあ。
一松さんはムッとした顔をしたが、無言でおかゆを食べている。
「ごちそうさま」
と、空になった器を返してくる一松さん。
良い子の十四松さんは『僕片付けてくるー!』とお盆を持ってドタドタ下りていく。
いや、まだ薬があるんだけど。
「まあいいか。では痛み止めの薬を飲みましょうか」
コップにお水をそそぎ、手のひらに薬を置いて一松さんに出す。
けど一松さんは目をそらし、
「いいよ。食べたら調子が良くなってきたし、ちょっとマッサージしてくれれば大丈夫だと思うから」
「いえ飲んだ方がいいですよ。こういうのは馬鹿に出来ないですから」
「大丈夫だから。ほら、もうそんなに痛くないし」
起き上がり身体を伸ばす。少し顔を赤くし、
「その……心配してくれて、あ、ありがと。カッコ悪いところ見せちゃったけど」
「そうですね。でも念のためにお薬は飲んでおいた方がいいと思いますよ」
「…………」
一松さんが私を見下ろす。
「何か、さっきからやたら薬を推してきてない?」
ギクッ。
「き、気のせいですよ。これは特に何の変哲もないごく普通のお薬ですよ!?」
「じゃあ試しに飲んでみて」
「いいいいえいえいえ。それは無理というもの。お薬は健康な人間が飲むものじゃないですよ?」
「自分もこの前までへたばってたよね。飲んでおいた方がいいんじゃない?」
ヤバい。一松さんの顔に陰がかかりだした!
「じ、じゃあ! お薬は止めておきましょう! あ、お茶をお入れしてきますね!」
と背を向ける。
「とか言って、こっそり薬を溶かすつもり?」
ギクギクギクっ!!
硬直する肩にそっと手が置かれる。耳元でひくーい声が、
「ね、何の薬? 怒らないから言ってみて」