第6章 派生②一松&十四松END
※2章135ページより分岐
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「イヤミ社長~」
「ダメったらダメざんす!!」
と、しばらく押し問答が続き、ついに――。
一松さんと十四松さんが迎えに来た!!
と思ったが来なかった。
「えええ!? 何で!! 詐欺じゃないですか!! 何で来ないんです!!」
「ワケの分からないことを言ってないで、とっとと帰れざんす!!」
仕方あるまい。一人で帰るか。
河川敷を上り、土手を走る。ひた走る。
息が荒い。緊張の汗が浮き出る。
握りしめた手の中には、一錠の薬が入った小瓶。
とんでもない薬を手に入れた。
これだけは……この薬の秘密だけは知られてはならない!!
あの男だけにはっ!!
――と、そのときの私は気楽に考えていた。
私はお馬鹿で自己中心的で、いつも自分のことばかり。
一松さんがどれだけ追い詰められていたかなんて、考えもしなかった。
この軽い気持ちが、あんな結末を引き起こすなんて思ってもみなかった。
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松野家に帰り、ガラッと玄関を開け、廊下を走る。
「おはよう、子猫ちゃん」
「松奈ー!! 俺たちパチンコに行くから何かご飯作って~!」
パジャマ姿で寝癖をなでつけるおそ松さんとカラ松さんに、
「おはようございます、お二人とも! 朝食は少々お待ち下さい死ね!」
「え……」
「今なんて……」
二人の横をすりぬけ、トントン階段を上って廊下を走り、六つ子の部屋のふすまを開ける。
「早く起きろよ、一松」
「一松兄さん。布団をたためないでしょ。早く~」
チョロ松さんたちの声。布団はまだ敷かれたままだった。一番奥で十四松さんが、
「あ、松奈! おはよー!!」
と手を振っている。
「十四松さん!」
私は『ぐぇ!』っと音を出す何かを踏み、一目散に十四松さんに駆け寄り、
「十四松さん!! 一松さんはどこに行かれました!?」
「松奈がたった今、踏んだのが一松兄さんだよ!!」
「あ」
振り向くと、うつぶせになって枕にしがみついている一松さん。
まだかろうじて生きている。チッ。