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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第5章 派生①一松監禁END



「ちゃんと普段から運動しないと。筋肉がつかないし、お腹もすかない。あと太る」
「うううー」

 た、確かに最近、私たちの体型は逆転しつつある。
 出会ったばかりの頃、半引きこもりだった一松さんは、ちょいとお肉のついてる体型だった。
 今は完全引きこもりの私の方が、その体型に近づきつつある。
 でも部屋から出ない生活だと、どうしても運動不足になる。

 それを心配した一松さんは、蓄えを一部崩し、思い切って室内用ランニングマシーンを買ったのだった! そして私は毎日走らされている……。
 
「はあ、はあ……」
 ようやくノルマを達成した。
 へとへとになってランニングマシーンから降りると、

「お疲れ。じゃ、一緒にシャワーに入ろうか、奥さん」
 と、一松さんが笑って私の手をつなぐ。
「はーい。あなた」
 私もふざけて笑う。私たちの左手の薬指には、指輪が光っていた。


 あれからずいぶんと時が経った。

 ……と思う。


 相変わらず外部の情報から遮断されているので、どのくらい経ったか不明なのだ。
 世間で大きな事件が起ころうと、今のところ私たちの小さな家を壊すほどではなく、私は閉じ込められた部屋からは一歩も出ていない。

 一松さんは未だにバイト生活だ。バイトは何度か変わってるみたいだけど、とりあえず続いている。
 収入を安定させたいと、正社員の口も探しているけど、元々口べたな性格もあって、なかなか上手くいかないようだ。

 そして私たちは結婚した。
 
 監禁から一年ほど経った(らしい)ある日、一松さんは結婚指輪と婚姻届を持って、ガクブルしながら私に結婚を申し込んだのだ。

 何つうサプライズだ。受けたけどね!
 ただし私は異界から来た存在なので、戸籍も本籍も何もない。
 受理されようのない婚姻届けは、妻と夫の欄に互いの名前が書かれただけの状態で、大事にしまわれている。

 私たちの結婚を知ってるのは私たちだけ。
 それでも小さなケーキでお祝いし、初夜ではない初夜に肌を重ね、幸せだった。
 それからも何も変わらない。ずっと二人きりだ。
 
 一松さんはあの日家を出てから、松野家には一度も戻ってないそうだ。
 生存を伝えるため、時々わずかな仕送りを松野家に送ってるらしい。

 私と一松さんの名前で。

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