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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第5章 派生①一松監禁END



 お父様、お母様はお元気なのか。
 優しい五人のお兄さんたちは、今どうしているんだろう。
 まだ実家でニートをやって、毎日馬鹿騒ぎを繰り返してるんだろうか。
 それとも一人二人と家を去り、誰もいなくなってるんだろうか。

 心配だけど、私は表には出さない。
 私よりずっとずっと心配だろう一松さんが、気にしないフリをしているから。

 私も一松さんも、自分に関わる全てを犠牲にし、互いを手に入れた。

 もう二度と離れることはない。

 …………

 シャワーで一戦交え、程良く空腹になった後は、食事の時間だ。
「はい、口を開けて」
「あーん」
 一松さん特製のシチューに舌鼓を打ちつつも、
「やっぱりご飯くらいは私が作りたいんですが……」
「ダメ。キッチンは部屋の外でしょ。それに俺が全部面倒を見たいから」
「そうやって全部背負い込んだら、負担がハンパないでしょ?
 バイトをして、家にお金を送って、家事まで全部して……」

 何のための奥さんなんだか。一松さんはコツンと私の額を指の角で叩き、
「俺が好きでやってることだから、いいの。松奈は何も心配しないで」

 そうなんだろうか。
 負担を何一つ分かち合わせてくれないで、夫婦と言えるんだろうか。

 仕事の悩みもお金の悩みもたくさんあるだろうに、一松さんは打ち明けない。
 あなたがずっと猫を飼いたがってることも、私は知ってますよ?
 でも今の不安定な収入では、とても無理なことも。

 私を外部から完全に遮断して、閉じ込めて、ただ可愛がって。
 私は妻というよりペットなんだろうな、と思うときがある。
 絶対に言わないけどね。

「口元、ついてる」
 ペロッと舌先でこぼれたシチューを舐められ、つい顔を赤くする。
「松奈は可愛いね。いつまで経ってもそういうところは」
「……馬鹿」
 せめて彼の幸せのため、私は馬鹿になりきるしかないんだろう。
 明日のことは何も考えない、松野家にいた誰かさんみたいに。

「何笑ってるの? 松奈」
 一松さんの笑顔を見て、私も笑う。

「幸せだなーと思って」
「そう? 良かった」

 動くと手錠の鎖が鳴る。
 そして私たちは、またキスをした。

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