第5章 派生①一松監禁END
「いいんですか?」
ボタンを外す一松さんの邪魔にならないよう、手錠をした手を頭上に動かしながら言った。
「私なんかのために、家もご兄弟も捨てちゃって」
単なる家出ではない。もう一緒にちゃぶ台を囲むことも、銭湯に行くことも無い。
もちろん何かあっても頼れない。安易に決めて後悔しないと言えるんだろうか。
「いいよ、いつかは家を出なきゃと思ってた。ずっとニートではいられないんだし」
一松さんには迷いがないみたいだ。
でも私は罪悪感で胸が激しく痛む。
私という小娘の乱入が、六つ子の崩壊を招いてしまったのだから。
でも心のどこかで、嬉しいと感じている。
「一松さん、あなたが、欲しいです……今すぐ……!」
「うん。分かってる」
足が絡み合い、私たちの間を邪魔する服はすぐに取り払われる。
そして私たちは時間も何もかも忘れ、愛し合った。
「松奈……っ……」
汗ばんだ一松さんの身体は、やっぱり前より筋肉がついていた。
逆に私はやせて細く、白くなった。青白くなったいうのかも。
「好きだ、松奈。だいすき……」
そして何度も何度も私の身体は貫かれる。
汗を散らして達するまで、一松さんは私の名を呼び続けた。
「ずっと、そばに、いるから……だいすき、だから……」
私も、泣いて応える。
私たちは手を絡ませ、いつまでも愛し合う。
もうここを出る逃げ道はない。
あったのに、今、私自らが閉ざしてしまった。
でも後悔はない。
だって、大好きな人が永遠に手に入ったのだから。
「おかえりなさい、一松さん」
…………
…………
…………
そして月日は流れる。
私は走っていた。
汗が流れる。足が棒になったみたい。手錠のチェーンの重さが結構クるなあ。
ぜえはあと息を吐き、タオルで汗を拭いて、
「つ、疲れました……ま、まだですか~?」
一松さんはベッドの上で猫の写真集をめくりながら、マシンの数値をチラッと見、
「ダメ。ノルマはあと1km」
と非情に宣言する。
「鬼ーっ!!」
ランニングマシーンの上で、私は絶叫。一松さんは無表情にコーヒーを飲んだ。