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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第5章 派生①一松監禁END



※一松監禁ENDは3章198ページにて『いえ、これ、私のじゃないですよ?』と発言した場合に発生

………………

「いえ、これ、私のじゃないですよ?」

 それを聞いた一松さんはしばらく黙り――木箱を落とす。
 そして私を抱きしめた。
「良かった」
 そのままキスをした。
「ん……っ……ん、ん……」
 深い。熱い。舌を差し入れられ、やや強引に絡められる。

 そのままベッドに倒れ込むかと思いきや、一松さんは一旦私を離した。

 そして床に落とされた箱をにらむ。
 それからその箱を持ち、頭上にかかげたかと思うと――床に叩きつけた。
 音を立てて踏みつける。何度も何度も何度も。

 私はベッドに戻り、膝を抱えてそれを見ている。
 やはり安物だったか、やがて木が砕ける硬い音がする。
 つぶれた箱の間から入ってないはずの電子機器が見えた。

 どうやら電源は入っていない。

 一松さんは一片のためらいもなく、それを踏みつけた。
 あーあ。見つからないよう、小型かつ薄型のを選んでくれたんだろうに。
 破壊されたスマホに手を合わせ、こっそりスマホを忍ばせてくれた皆に密かに詫びた。

「ドラマみたいな、姑息な手を使ってくれるよね」

 はあはあ、と荒く肩を上下させながら一松さんが言う。
 そして私に近づき、もう一度抱きしめる。

「ありがとう、松奈」

 お礼を言われる筋合いはない。私は楽な道を選んだだけ。

 一松さんが前に持ってきてくれた松野家の漫画本。
 そこには、私の安否を問うメモが書かれていた。

 だから私は書いた。『元気で幸せです。今までありがとう』と。

 やはり安心してくれなかったか。

「ずっと大事にするよ。ずっと……」
 そして、一松さんは私を優しくベッドに押し倒した。


 あえて電源を入れずに忍ばせたあたり、あちら側のためらいを感じる。


 そしてそのためらいが今、決定的な結果をもたらしてしまった。
 
「もう俺は家には戻らない」

 一松さんはそう言った。

「今からここに住む。ずっと松奈のそばにいるから」

 確かに。スマホが起動されないまま一松さんが松野家に戻ったら。
 残りの六つ子は、実力行使に訴えてでも一松さんを追及するしかなくなる。

 あのスマホは一松さんへの『家を取るか、恋人を取るか』という問いかけでもあった。

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