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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第4章 後日談


 …………

 数日後の夜。

「松奈。話がある」
 ついに来た、と思った。
 帰ってきた一松さん。
 ちゃんとお風呂に入り、なぜか青スーツを着て私の部屋に来た。そして私の前に正座した。

 ものすごく真剣な顔だ。私も彼の前に正座し、

「そう、かしこまらないでイイですよ。分かってるし」

 確かに重大なこととはいえ、引っ越しに大げさだなあ。
 まあニートだから、家を出るのは一大事なんだろうけど。

「え? 分かってるの? なら話が早いけど」
 一松さんは肩すかしを食らい、ちょっと残念そう。
「だって、いきなりバイトを始めるし、予想くらいつきますよ」
「そ、そうだね。で、松奈の返事はどうなの?」
 軽く言ったものの、一松さんは顔を真っ青にしてガクブル。
 でもその目にはかすかな期待の光。

 私は腕組みをし、うなる。

 家を出るや否や。

「すごく迷ってます」

「え? えええええ!?」
 一松さんはガーンと、ショックを受けた顔。

「そんなに、迷うことなの!?」
「そりゃ迷いますよ。重大事なんだから」

「ま、まあ女の子にはそうか……俺、まだフリーターだし……」
 一松さんは泣きそう。いやニートだろうとフリーターだろうとどうでもいい。
 だって家を出るか出ないかですよ? 重大じゃないですか。

「お弁当を作ったり応援してくれたりしたから、OKなのかと……」
 一松さんは今にも泣き出しそう。

「頑張ってる一松さんは応援したいけど、それとこれとは別ってか」
「今までは頼りなかったかもしれないけど、これからちゃんとするから!」

「今までの生活がガラッと変わるんですよ? こう、色々とですね――」
「変わったっていいよ。家事も手伝うし、色々な場所も連れて行ってあげる!
 松奈ともっと、いっぱい一緒にいたいから。だから――!」

「でも二人で家を出て、アパートを借りるのは寂しいような――」

「だから、結婚して下さいっ!」

 …………。

『は?』

 互いに同じ言葉を発し、固まった。

「何すか、結婚って」
「俺とこの家から逃げようとしてたんじゃなかったの?」

 えーと。

 えーと……。

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