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【松】六人の兄さんと過ごした三ヶ月

第4章 後日談



 運命の人に出会って、色んな障害があって、それでもついに結ばれて。

 そして、日々は幸せに過ぎ。

 私はある悩みを抱えていた。

 …………

 幸せな幸せなある日。
 家事を終えてお母様とお茶を飲んでいると、お母様が仰った。

「で、松奈。孫はいつ生まれそう?」

 ブホォッ!!

 私は盛大に茶をはき出し、ちゃぶ台に突っ伏した。

「ま、松代さん、何を……!?」
 だがお母様はちゃぶ台を拭くこともなく、ポンと私の肩に手を置き、
「松代さん、じゃないでしょう?」
「お、お母さん……」

「お義母さん」

 発音は同じなのに、なぜか字面まで見える!!

「は……はははは……」
 笑ってごまかしたつもりだったが、お母様の眼は完全に光っていた。
「松奈。あなたのことはもう実の息子以上に可愛い。実の娘同然よ」
「そ、それはどうもありがとうございます……」
「このまま、うちの本当の娘になってくれるわね!?」

 声がマジだ!! ま、まあそれ自体は大変に嬉しいのだけど。
「い、いえそのですね。私も一松さんも無職だし、孫とかそういう話は……」
「大丈夫よ。子供が生まれたらあの子もしっかりするわ」
「あと私、未成年だし! 色々と問題がっ!!」
「私は息子六人育てたの。サポートは任せてちょうだい」
「お母さまぁー!!」
 悲鳴のような私の声に、我に返ったらしい。
「ごめんなさいね。先走りすぎたかもしれないわ」
 お母様がスッと引いて下さったので、胸をなで下ろす。

「いえ私こそ。ありがとうございます」
「でも何かあったら遠慮無く相談してね。力になるわ」

 そう言って、スッと――真新しい婦人体温計を差し出したのであった。

 …………

 お母様の新たな一面に、ガクブルしながら階段を上がる。
「ん? どうしたんです、一松さん」
 部屋に入ると、一松さんが私に背を向けて震えていた。

「出かける時間はまだ先……え? 何やってんですか、昼間から!」
 一松さんはその……ゴ○を箱から出しているところだった。
「ほら早く――」
「……穴が開いてる」
「は?」
 一松さんは血の気の失せた顔で、私に一個、渡した。
 こ、こういうの直視するのは恥ずかしいなあ~と思いながら見ると、
「……あ?」
「ね?」

 ゴ○の全てに、ピンで刺したような穴が、確かに開いていた。

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