第3章 三ヶ月目のさよなら
「そうそう。例えば『就職しなきゃ』『この生活から抜け出さなきゃ』と繰り返し、
ハロワに行ったり求人誌を見かけたら手にとってチェックしてる奴がいるとする。
でもいつまで経っても面接に行く気配は無い。さてこのライジングの本音は『就職したい!』か『いつまでも無職童貞でいたい!』か」
どういう例えだ、おそ松さん。ライジングって何すか。
そして『いや童貞ではいたくねえよ』とこぶしを震わせるな、チョロ松さん。
「いえ私は本心から帰りたいと思うし、行動にも移してます。本当に帰りたくないなら、何もせず今日をやり過ごすだけでいいでしょう?」
『帰りたくない』
全員が眼鏡の猫ちゃんをじっと見る。そして私に視線を移す。一松さんは、
「何で本心を言ってくれないの。俺が恋人じゃ不安だから? 無職で未来も何もないゴミだから?」
「そんな風に思わないで下さいよ。別に気にしてないし」
『そんな風に思わないで下さいよ。別に気にしてないし。相変わらず暗くて面倒くさいなあ』
「…………」
にらむなっ!! 前半は言葉通りだったでしょう!!
「一松、そういう本音を聞き出すためのエスパーニャンコじゃないだろう?」
カラ松さんが弟の肩を叩く。エスパーニャンコ! 可愛いなあ!
一松さんは嫌そうにしながら、口を開いた。
「松奈。帰りたくないんだよね。なのに、何で帰ろうとするの」
ううう。何か変なことになってるー。
でも私はやっぱり帰りたいと思ってると思うし、変な猫ちゃん連れてきて、『帰りたくないのが本音であろう!』と指摘されたって『帰るの止めますー!』になるわけないでしょうがー!
何なの皆、何を考えてるの。とにかく猫ちゃんが変なことをしゃべろうとも、説得せねばなるまい。
「いえ、ですからね。皆さんがご家族を大切に思ってらっしゃるように、私にも家族がいると思うんです。皆さんのことが大切だからこそ、私も――」
『帰りたくない。でもここにいるのも怖い』
…………。